Peanuts Kingdom 学園ヘヴン

英会話

この学園にいる生徒たちは学業的に成績優秀者な人はもちろん、
スポーツやその他の分野で世界的に活躍してる選手なんかもいるものだから、
ふと見渡せば結構みんな英語が話せるっぽい。
俺なんか・・・普通に学校で習ってるだけで、外人と話したことなんかほとんどない。
英語が嫌いってわけじゃないけど、特に得意ってわけでもないから・・・
「いいなぁ〜・・・」
ため息まじりにそんな言葉が口をついて出た。
ランチを食べ終わって、テラスで一緒にのんびりしてた和希がぎょっとして俺に振り返った。
「なにがだよ?」
「え?だからさぁ・・・」
言いかけて口をつぐむ。
そういえば和希も英語ペラペラなんだっけ。
俺に合わせて普通の学生のフリなんかしてるけど、
実は理事長でしたなんてとんでもない肩書きもってるやつだし。
英語の授業だって当然アルティメットクラスのはず。
そんなことを思い出したら、またため息が出てしまう。
「なぁんだよ、どうしたんだ?深刻そうにため息なんてついちゃって」
和希は苦笑して俺の顔をのぞきこむ。
あぁ、もぅ・・・この余裕の笑みがしゃくにさわる。
俺は少し口をとがらせて、和希を軽くにらんだ。
「おまえも本当は、英語しゃべれるんだろ?」
「・・・はぁ?」
「英語!アメリカに留学してたくらいなんだから、ペラペラなんだろ?」
「・・・う〜んと、まぁ・・・な」
なんとなく俺から視線をそらした顔が、そんなのはたいしたことじゃないよと言ってるようにみえる。
「・・・あ〜あ」
やっぱりそうだよな、と、わかっちゃいたけど、あらためて和希がいわゆるエリートに属する人間であることを認識してしまって、
なんだかつまらなくなる。
「なんだよ急に」
「べっつにぃ・・・ただなんとなく思っただけ」
「なんとなく、ねぇ・・・啓太も英語、しゃべれるようになりたい、とか?」
和希はそう言って頬杖をついて微笑んだ。俺はほんの少し、頬が熱くなる。
こういうときの和希はやたら大人びてみえて・・・どきどきして困るんだっ。
だからなんだかむきになってしまう。
「そりゃそうなりたいよっ。だってなんか悔しいじゃないか。
こないだ、和希の机の上に英語の新聞が置いてあったのみたんだぞ」
「あぁ・・・あれは石塚がおいてったものだよ。別に俺が読んでるわけじゃない」
「でも読めるだろ?」
「まぁな」
・・・なんだよ、和希のやつ。やたらニコニコして・・・なんでそんな楽しそうなんだよっ。
「・・・和希?」
いぶかしげににらむと、ますます笑みに深みを増す。
「なんでおまえそんな笑ってるんだよ」
「いや、だって・・・可愛いなぁって思って」
「っ!なっ・・・ばかにしてるのかっ!」
「違うって。本当にそう思ってるよ」
「な・・・なおさら悪い・・・っ」
あぁ、もう、本当に卑怯だ。俺、きっと真っ赤だよ・・・。
本当は悔しいのに、和希にこんな幸せそうな顔されて、こんなこと言われたら、不機嫌なんてとんでいってしまう。
「も、も、もぅ、笑うなっ」
「あはは、ごめん、ごめん・・・でもさ、啓太、本当に英語を習いたいなら、俺が教えてやってもいいぞ」
「えっ、和希が?」
「あぁ。日常会話程度なら」
「でも・・・どうやって?」
「簡単なことだよ。普段、こうして俺たちがしてる会話を英語におきかえればいいんだ」
「えっ、英語にぃ〜っ?!そんなこと、無理だよ!」
「そんなことないさ。文法とか発音とか気にしすぎないで、伝えたいって気持ちがあれば十分だよ」
そんなこと言うけど・・・俺がいまこうして考えてることを英語にするってことだろ?
それってかなり難しいことなんじゃないかと思うんだけど・・・。
「ん?今、啓太、なに考えてるんだ?早速、英語で言ってみろよ」
「えぇっ?そんな・・・」
今考えてたことを英語にするって・・・うーん・・・今俺が和希に伝えたいことは・・・
「うーんと・・・difficult ・・・かなぁ・・・」
「It's difficult! か?でもできたじゃないか」
「え〜、こんなんでいいのかぁ?」
「上出来、上出来。Very Good!」
「う〜ん」
なんかうまくのせられてるだけのような気が。
それに・・・なんかちょっと恥ずかしいかも。
だって相手は和希だし。俺のヘタクソな英語きかせるのもなんか情けないよな。
「和希ぃ、やっぱ無理かも〜」
「はいっ、英語でドーゾ」
「えぇ〜っ?!ええと・・・ええと・・・It's impossible!・・・や、やっぱりちょっと恥ずかしいよ〜」
「恥ずかしがることなんかないって。啓太、ちゃんと英会話できるじゃないか」
「こんなの、英会話ができるってレベルじゃないだろ」
「でもちゃんと伝わってるよ、啓太の気持ち」
「それは和希だからだろっ。それに俺、和希と話するのにこんな気を使うのイヤだよ」
「啓太・・・」
そうだよ。せっかく二人きりでいるのに、英語のことばかり考えてるなんて、そんなのもったいないじゃないか。
和希と一緒にいる時間は、俺にとってはとても大切な時間で、一番幸せな時間なのに・・・
「・・・そうだな。啓太の言うとうりだな」
「和希・・・ごめん、俺のために言ってくれたのに」
「いや、謝る必要なんてないよ。よく考えてみたら、確かに骨がおれそうだ」
「えっ、和希でも?」
「あぁ。周りが日本語って環境で英語をしゃべろうとすると、頭の切り替えがなかなか、な」
ちょっと意外。和希なんて、いつでもどこでもペラペラしゃべれるんだと思ってた。・・・いや、きっと本当はそうなんだろう。
でも、俺が英会話できないこと気にして、悔しいって思ってることも、和希はお見通しだから、
そんな優しいウソをついてるんだろう。
「へへ・・・」
それでもなんだかうれしくなってきて、笑みがこみあげてきてしまう。
「なんだよ?」
「おまえ・・・頭の切り替えができないって、なんかジジくさい」
「なっ・・・ひどいな、啓太」
「ジョーダンだよ」
「もう・・・」
さっきまでと逆の立場になって、俺はなんだかほっとする。
和希はやっぱり和希なんだなって。
和希にどんな特技があったって、肩書きがあったって、今目の前にいる和希は俺の一番の親友で・・・恋人なんだ。

「ところでさぁ、啓太」
昼休みも終わりが近づいて、教室に戻る途中で、和希が話しかけてきた。
「なに?」
横で歩く和希をみると、なにやら意味深な笑みをうかべている。
う・・・こういうときの和希って、あまりロクなことを考えていないような・・・
「なんだよ・・・」
「"あなたが好きです"ってのを、英訳するとどうなる?」
「はぁ?!」
「簡単な問題だろ?」
ああ、やっぱりロクなことじゃなかった!
それってつまり、俺に"I love you" って言わせたいってことだろ!
「なに考えてんだよ、和希!」
そんなこと、絶対言うもんか!って、俺は歩く足をはやめる。
「いいじゃないか。まさか啓太、わからないとか言わないよな?」
俺に合わせて和希も歩く速度をはやめる。
「英会話はもうやらないって決めただろ!」
「いいじゃないか、一言だけ!なっ?」
あ〜もう、本当に和希ってば!
こうなると結構しつこいんだよな、和希のやつ。
とりあえず今は、逃げろ!
「あっ、待てよ、走るなんて・・・」
「やーだーよっ!」

たとえ英会話スクールの授業中であったとしても、
日本人と英語でしゃべるのは恥ずかしいです。
あんまりデキる恋人をもつと、プライドが高い人には辛いかも?
でも和希は啓太の扱いは上手なのでno problem!
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