恥ずかしがり屋な彼とのスキンシップ方法
我ながらあきれるほどに一途に、時には姑息とも思える手段で手に入れた恋人。
この想いを受け止めてくれたことを確認するために、
そしてこの想いを伝えるために、
強引とも思えるほどわがままに愛情表現をぶつけてきてしまったけれど。
あまりに恥ずかしがらせてしまったり、ちょっと怒らせてしまった時には一瞬反省するものの、
後悔する気はさらさらない。
だってこんなに好きなんだ。
そして啓太も俺のこと好きだって想ってくれてるんだろう?
「っ・・・だから和希!こ、こういう人目のあるところでそういうことするなっていつも言ってるだろ!」
一応人目がないことを確認して・・・キスしたつもりだったんだけど。
それもほっぺにだぜ?
でも啓太は真っ赤になって非難の目を俺にむける。
ああ、そんなふくれつらも、俺にはかわいくしか映らないんだけど。
「大丈夫だって。啓太は気にしすぎだよ」
「和希が気にしなさすぎなんだって!いつもいつもおかしなタイミングで・・・
き、キスとかしてくるから、俺っ、どうしたらいいかわからなくなるだろっ」
「どうしたらいいかって?」
「だっ、だから・・・誰かにみられたりしたらどうするんだよっ」
「いいんじゃないか?バレたらバレたで。本当のことなんだし」
「和希!」
啓太のきつい口調に肩をすくめる。
「冗談だよ。でもちゃんと確認してるぜ?さっきのだって、誰もみてないって」
「だから、そういう問題じゃないって言ってるだろ。いつも・・・突然すぎるんだよ」
「突然すぎるって・・・なにが?」
「なにが、って・・・はぁ〜」
啓太はがっくり首を前に落とし、大きくため息なんかついている。
う〜ん、啓太の言いたいことはわかるけどな。
俺があまり啓太の気分とか気持ちとか考えずに、したい時にしたいようにしてるってことが困るっていうんだろう?
「じゃあ・・・いつだったらしてもいいんだ?」
「えっ・・・いつだったらって・・・」
みるまに啓太の顔が赤くなる。
「じゃあ・・・たとえばキスしたくなったら、合図をおくればいいのか?」
「あ、合図って、そんな・・・ち、違うよ!俺が言ってるのはそういう意味じゃなくって!」
啓太は俺をきっと見上げた。あいかわらず、ほっぺは真っ赤なんだけど。
「いつもそうやって和希の方が余裕で、俺をふりまわしてるじゃないか!そんなの不公平だっ」
「不公平って・・・」
思わず苦笑すると、啓太はますますムキになる。
「不公平だよ!いつも俺ばかり焦って、ドキドキさせられてっ・・・」
「ドキドキしてんだ?」
つい嬉しくなってニッコリしつつそんなことを口走ってしまったら、直後、啓太にべしっと頭をたたかれてしまった。
「だからそうやって!いつも俺のことからかうだろっ!」
「いたた・・・からかってなんかいないって」
「からかってる!」
「ふぅ・・・でもさ、啓太。もし俺がなにもしなかったら、おまえの方からしてくれるか?」
「えっ・・・それは・・・」
口ごもる啓太に俺は内心そらみろ、と思ってしまう。
二人きりでいるときですら、照れ屋ではずかしがり屋な啓太の方から甘えてきてくれるなんてことは滅多にない。
俺としては、啓太は俺とスキンシップをはかるのはいやなのかなと不安になっちゃうよ。
だから俺は、我慢なんかしないで、どんどん愛情をぶつけて、それを受け止めてくれるかどうか・・・確認してしまうんだ。
「俺としては、啓太の方からキスをおねだりしてくれた方が、本当はずっと嬉しいんだけどな」
「か、和希・・・」
「啓太がしたいって思ったときに、和希って俺の名前呼んで、目を閉じてくれれば・・・突然なんかじゃなくなるだろ?」
「うっ・・・」
啓太はもう耳まで真っ赤だ。
でも、その瞳はもう怒っておらず、迷っている様子が手にとるようにわかる。
「恥ずかしいかもしれないけど、俺から突然されるのがいやなら、啓太から教えて・・・?」
「っ・・・」
「啓太・・・今、俺とキスしたい?」
「へっ・・・い、今?」
「もしそう思っているなら・・・ほら・・・」
「・・・」
啓太はきょろきょろとあたりをみまわして、周りに人がいないかどうか確かめている。
午後の授業まぢかの昼休みの中庭は、遠くに人影がまばらな程度。
ここでなら・・・と啓太も覚悟を決めたのだろうか。
俺の方に向き直ると、一瞬大きな瞳をまばたかせたが、ゆっくりと、まぶたがふせられた。
少し、うつむきがちになってしまった顔を、あごに指をかけてついと上向かせる。
「っ・・・」
啓太の睫毛が震えていた。
顔をかたむけて、その唇にそっと唇を重ねる。
そしてすぐ離れると、啓太はぽうっとした表情で俺を見上げた。
「・・・啓太」
「あっ・・・」
名前を呼ばれて我に返った啓太は、また耳まで赤くなる。
そんな様子に俺はおもわず満面笑顔。
「これならいい?」
「っ・・・だい・・・じょうぶかもしれないけど・・・すっごく恥ずかしいっ」
「俺も・・・なんかすごい新鮮な感じ」
「か、和希・・・っ?!」
こみあげてくる啓太への愛しさにつきうごかされるように啓太を抱きしめる。
「好きだ、啓太・・・」
顔の横にある熱い耳に唇を寄せ、そっとささやいた。
「和希・・・っ、なにやってるんだよっ、誰かきたら・・・っ」
ごめん、啓太。やっぱり俺、我慢するなんてできない。
啓太が一つキスをくれただけで、俺はもう何十回だってキスしたいって気持ちになっちゃったから。
そのことを告げると、啓太はもぅ・・・としかたなさそうなため息をついた。
「本当に和希ってば・・・しょうがないやつ」
「ごめん」
謝る俺に、いいよ、と言ってくれたその言葉は、重ねた唇から直接うけとらせてもらった。
お題 【 1.震える睫毛】
啓太は強引な和希に怒ってるわけじゃないんです。
人目が気になるというのも、本気じゃないんです。
ただ、いつもドキドキさせられてばかりいるのが、ほんの少し悔しいだけなんです。
とはいえ結局のところ、スキだらけの啓太がイケナイんです。
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