Peanuts Kingdom 学園ヘヴン

添い寝

ブブブ・・・
枕元に置いてあった携帯がバイブで震えた。
浅い眠りから呼び戻され、面倒だなと思いつつ携帯に手を伸ばす。
モニターに表示されているのは"和希"という文字。
あ、和希からメールが来たんだ。
時間を確認すれば、ちょうど放課後の授業が終わった頃だ。
ああ・・・お昼ごはんのおかゆを食べたあと、風邪薬を飲んだらそのまま眠くなっちゃって、俺、寝ちゃってたんだ。

今朝起きたらなんだか体がだるくて、あれ?と思ったらやっぱり熱があって。
一度は学校に行きかけたんだけど、俺の体を心配する和希にとめられて、俺は学校を休むことにした。
このところ寒暖の差が激しかったし、ちょっと油断してたかも。
でも薬飲んで寝たら、だいぶ楽になったみたいだ。
"具合どう?"
と一言だけのメール。和希のやつ、急いで打ったんだろうな。
俺も、だいぶ良くなったみたい、とだけ打ち込んで返信する。
あともう少しだけ、夕食の時間まで眠ったら、きっと・・・

もう一度眠ろうと目を閉じたその時、コンコンッと軽くドアをノックされた。
「え・・・」
「啓太・・・起きてるんだろ?入ってもいいか?」
「あ・・・和希・・・」
たった今メールを返信したばかりなのにこのタイミング。
和希のやつ、ドアの前で俺が返信するのを待ってたんじゃないだろうか。
ベッドから出てドアの前に立つと、やっぱりまだ頭がクラクラする。
カギをあけると、そこには心配そうな顔をした和希が立っていた。
「ごめん、啓太、起こしちゃって・・・もういいから、すぐベッドに戻れ」
「あ、うん・・・」
和希にうながされるままに俺はベッドに戻る。
和希は勉強机の椅子をベッドの横にもってくると、そこに座った。
布団を整えて、体とすきまができないように、ぎゅっぎゅっと布団を押し込んでくれる。
「熱、まだあるのか?」
「う〜ん・・・どうだろ?まだ測ってないけど、でもだいぶ楽になったよ?」
「でもまだぼんやりしてる」
和希はそう言って、そうっと俺の前髪をかきあげる。
少し、ひんやりとした指先が心地いい。
額に押し当てられた手に、思わず吐息をもらしてしまう。
「啓太?」
「ん・・・気持ちいい・・・」
「啓太・・・」
俺がそう言ったからか、和希はそのまましばらく、俺の額に手を置いたまま動かなかった。
ゆっくりと親指の腹でなでられるのも、気持ちがいい・・・
目をあけると、和希は嬉しそうに笑っていた。
「啓太・・・なんだかかわいい」
「あのなぁ・・・」
「ごめん。でも本当、なんか小さい啓太を思い出すな」
和希はそう言うと、今度は髪をやさしくなでてくれた。
そんなことされちゃったら俺だって・・・甘えたくなるじゃないか。
「和希・・・」
「なんだ?」
「このあと、時間大丈夫なのか?」
「ああ。今日はあとはずっと啓太の看病」
和希のやつ、最初からそのつもりだったな?
「風邪うつるぞ」
「大丈夫だよ。俺は丈夫だから」
でも、やっぱり嬉しい。
なんかやっぱりこう弱ってるときって、安心できる人にそばにいてもらいたいって思っちゃうから。
「あのさ」
「うん?」
「俺が眠るまで・・・ずっといてくれる?」
ずいぶんワガママなこと言ってるってわかってるけど、でも今は甘えたい。
それに和希だって、ほら・・・またふわりと優しく微笑んでくれて。
「・・・あぁ。ずっと啓太のそばにいるよ」
って・・・また、髪をなでてくれた。
和希の指が、声が、俺を甘く包んでいく。
俺はとても幸せな気分になって、笑顔を浮かべたまま、まぶたを閉じた。

「・・・啓太」
「・・・え?」
実はもう眠くて、半分寝かけてたところをまた起こされる。
う〜ん、もう眠りたいんだけどな。
「なに・・・?」
「あのさ・・・俺も一緒に寝ていい?」
「えぇ?」
「どうせなら、一緒に寝とこうかなって」
「寝とこうかって、なに言ってんだよ」
「いいじゃないか。啓太と一緒にお昼寝させてよ」
「またそんなこと言って、本当に風邪うつるぞ?」
「啓太の風邪ならうつってもかまわないさ」
「俺がかまうよ」
「一緒に布団にくるまって暖かくしてれば、風邪なんかひかないよ。・・・な?啓太」
ああ、もう・・・しようがないやつ。
こういうこと、言い出したらきかないからな。
俺が無言でため息をついたのを、了承とうけとったらしい。
和希は椅子を元に戻すと、その背もたれに制服のジャケットをかけた。
「ズボン・・・は、まぁいいか」
「よくないだろ。洗ったばかりのスウェットがあるから、それはけよ」
「はーい」
おいおい、返事がうきうきしすぎだよ。
「じゃ、お邪魔しまーす」
和希は隣に体をすべりこませると、俺の頭の下に腕をさしいれてきた。
そしてもう一方の腕を俺の体にまわし、完全に抱きしめる姿勢になる。
「ちょっと・・・和希・・・」
「苦しいか?」
「そんなことはないけど・・・」
この体勢は、シた時のことを思い出してしまって、なんだかちょっと・・・
「啓太・・・体、熱い」
「なっ」
からかわれたのかと一瞬むっとしたけど、抱きしめる腕にきゅっと力がこめられて。
「まだ、熱があるのかな・・・寒くないか?」
そんな風に心配そうな声をきいたら、勝手に想像してあせってしまった自分が恥ずかしい。
「寒くはないよ。和希、暖かいもん」
「そうか・・・」
和希の腕が伸ばされて、手が、俺の手に重なり、きゅっとつかまれた。
「手は冷たいな・・・足も」
「か、和希・・・」
手だけでなく、足まで絡められて、完全に重なり合ってしまったような感じがする。
ふと、こめかみにやわらかなものを感じて、和希にキスされたことを知る。
「俺が・・・暖めてやるから・・・」
「・・・うん・・・・・・」
トクン、トクンという静かな鼓動。
シャツから和希の汗の匂いがする。
そうしてしばらくの間、俺はドキドキしちゃって眠るどころじゃなかったけど。
俺より先にすうすう寝息をたてる和希につられるようにして、俺もとろとろ眠くなる。
じんわり伝わる和希の体温が俺の体温と混ざり合って、心地よいぬくもりを与えてくれる。
目が覚めたときも、和希がそばにいてくれるという、甘ったるい幸せ。
もう一度、すり、と和希に顔を寄せ、俺は深い眠りにおちていった。

お題 【 3.同化する体温】
好きな人と二人きりで自分だけ起きているって、拷問じゃないですか?
このあとたとえ和希が風邪をひいたとしても、
そのときはまた啓太が添い寝してあげればいいんです。
添い寝する和希の格好をどうしようか迷いました。
ズボン脱がしてトランクス・・・とも思ったんですが、生々しいなと思って却下しました。
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