Peanuts Kingdom 学園ヘヴン

飢えたヴァンパイア

アメリカで行われる重要な会議に出席するため、和希が日本を出て一週間。
ようやっと帰国の日がやってきた。
こんなに早く帰りたいと気が急くのは、ただ一人の愛する人が待っているから。
仕事が終わり次第すぐに乗れる飛行機を手配して、まさに飛ぶようにして和希は日本に戻ってきた。
空港に着いてそうそうに啓太にメールをうとうと携帯を持ったけど、
結局メールせずに学園島まで戻ってきてしまった。
腕時計をみれば、もう0時をまわっていて、啓太はもう寝てしまっているかもしれない。
それとも、今夜和希が帰ってくることだけは知らせていたから、寝ずに待っていてくれたりするだろうか。
期待と不安がいりまじった気持ちで、制服姿に戻った和希は、ようやっと啓太に携帯メールを打った。

すると、数分とたたぬうちに携帯がブルブルと震えだした。
ウィンドゥには啓太の名前。
「電話っ?」
驚いた和希はあわてて電話に出た。
「啓太?」
『・・・おかえり、和希。今、どこにいるんだよ』
久しぶりにきく啓太の声。
本当は海外からでも電話できるのだが、時差と通話料金を気にする啓太にかたく止められていたから。
啓太の声が、いつもより甘くきこえる。
「サーバー棟の下だよ」
『あ、もうそこにいるんだ』
「あぁ」
『じゃあ、もう戻ってくるんだろ?』
「・・・そう、だな」
『なんだよそれ』
電話の向こうで啓太が少しむっとしてる。
ようやっと戻ってきた和希に早く会いたくて、携帯をそばにおいて待っててくれたのかもしれない。
和希はますます甘い、くすぐったいような気分になってきた。
「啓太・・・会いたい」
『っ・・・だから・・・もう帰ってきたんだろ?早く来ればいいじゃないか』
「これから啓太の部屋に行ってもいいのか?」
少しかすれた、大人の男の声に、啓太が一瞬息をのんだ。
『・・・なんかおまえ・・・切羽詰ってないか?』
図星をさされ、和希は思わず声をたてて笑った。
「あぁ、切羽詰ってるさ。これ以上はないくらいに」
『だったら。・・・早く来ればいいだろ。俺だって・・・』
「わかった。この続きは啓太の部屋で。今から行くから」
和希は啓太の返事も待たずに携帯を切った。
そして夜の学園を寮に向かって走り出した。

コン、コン、と控えめなノックがして、啓太ははじかれたようにベッドから立ち上がった。
まだ制服のままでいたのは、和希が帰ってきたらすぐに迎えに出て行けるように。
啓太だって、今日という日がくるのを指折り数えてたのだ。
どきどきする自分をおさえつつ、鍵をあけドアを開けると、そこには同じBL学園の制服を着た和希が立っていた。
「和希・・・おかえり」
「ただいま」
和希は後ろ手にドアを閉め、器用に鍵をかけるとすぐ、啓太を抱きしめた。
「かず、っ・・・」
そのまま唇を奪われ、啓太はとっさに目を閉じる。
いきなり強く舌を吸われ、どれだけ和希が啓太に会いたいと思っていたのかが伝わってきて。
啓太の和希を抱きしめる腕にも力が入る。
長い口づけをといても、和希は啓太にキスし続ける。
額に、頬に、目元に、やわらかな耳たぶにも。
そして。
「あっ・・・」
小さく啓太が声をあげたのは、啓太の弱い箇所でもある首筋にキスされたから。
そんな反応に気をよくした和希は執拗にそこに唇を押し付ける。
「ちょっ・・・か、和希っ・・・」
こんな、あまりにも性急な行為に啓太はとまどう。
ようやっと会えた恋人だから、もっとちゃんと、和希に会って話がしたいのに。
「和希!こ、こういうことする前に、いろいろあるだろっ!ロクに話もさせないでっ」
グイッと体を押されて行為を中断させられた和希は不満げな表情で啓太を見た。
「だって、ようやっと啓太に会えたのに」
「それは俺も同じ気持ちだけど、会って早々いきなりはないだろっ」
「それだけ啓太に会って、触れたかったってことだよ」
「だからって・・・わっ!」
問答無用とばかりに和希に押し倒され、啓太の体がベッドに沈む。
啓太は必死に和希の肩を押し戻す。
「和希っ!」
「あ、啓太、ここになんかついてるぞ」
「え?」
不意に、きょとんとした顔で首筋を指さされ、思わず啓太は腕から力をぬいた。
そのすきにとばかりに和希はおもいきり啓太を抱きしめ、同じ箇所に口づける。
「っ?!か、和希!おまえちょっ・・・さかりすぎ!」
「もう啓太切れ起こしてるんだよ。ここ、キスマークつけちゃったから、明日気をつけろよ」
「和希のせいだろ?!」
怒ってるような、呆れたような啓太の声。
でも、間近でみつめあえば啓太の顔は真っ赤で。
「・・・ごめん。啓太の言うこと、わかるけど・・・まずは啓太を補充させて?」
甘えたようにそう言えば、啓太が和希のおねだりをきかないわけもなく。
しかもこれだけもう触れられてしまったら、啓太だってもう歯止めがきくような状態じゃなかったから。
「補充って・・・俺は食料かよ」
啓太の精一杯の反抗に、和希は幸せそうに微笑む。
「そうだな。俺は啓太を食べて、生きてるから」
「っ・・・たく、もぅ・・・」
ここまで言われてしまったら啓太も完敗。
啓太の腕が背中にまわされると、和希は再び啓太に口づけた。

お題【3.飢えたヴァンパイア】より、同名創作で。
ちっともヴァンパイアじゃないですけど、そのへんはご勘弁。
和希は盛り上がるシチュをみずから作り上げて自分を追い込んでしまった模様。
啓太は完全被害者です。
まぁ、相手は啓太に飢えたヴァンパイア=和希ですから。
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