Peanuts Kingdom 学園ヘヴン

親友、和希という人

手芸部の用事があるから少し遅れるけど、必ず行くから待っていて、と。
和希からのメールどおり、俺は空き教室からぼんやり中庭を眺めていた。
今夜はスペシャルカレーでナンがついてきて、ラッシーも飲めるっていうから、
絶対一緒に食べようぜ、って。
そんなの、寮まで一緒に帰らなくったって、一緒に食べれると思うんだけど。
でもわざわざこんなメールよこしてこられたら、俺も結構律儀な質だから、素直に待ってしまう。
和希っていつもこんな感じで、すごく、俺のこと・・・好意をもってくれてるってわかるから。
和希の好意を裏切れないというか、むしろこたえたい、なんて思ったりして。
ってことは、俺も結構、和希のことを気に入ってるってことだよな。

この学園に来てまだ間もないのに、こんなに仲良くなる友達と出会えたって、すごいラッキーだなって思う。
たしかに俺は運には自信があるけれど、それとこれとは違うよな。
教室ではじめて声をかけてくれた和希。
なにかと世話をやいてくれて、いつも俺と一緒にいてくれた。
俺がこの学園に早く馴染めたのは、和希のおかげだ。
それに、この学園にはすごい才能をもった人たちばかりで、
運がいいこと以外、特別特技をもったわけではない俺としてはやっぱり肩身が狭い。
でも和希は・・・そんなすごい奴っていうより、普通、にみえるし。
それこそ普通の俺みたいな奴でも、歓迎してくれて、親切にしてくれて、今もこうして、俺に待っててくれって・・・

文化部の入った棟のある方向から、見慣れた姿があらわれた。
少し早足で歩いていたその人は、俺のいる教室を見上げると急に小走りになった。
啓太、って、声には出さないけれど、こちらに手を振っているから俺に気づいたのだろう。
「和希!そんな走ると、転ぶぞ!」
窓からそう叫ぶと、和希は平気、平気!なんて言って。
でもあんまり走らせるのも本当になんだから、俺は窓を閉めると席を立って出口に向かった。

「待たせて悪い!」
「そんな謝るなよ。たいして待ってないから」
だいたい、おまえが待っててくれって言ったから待ってたんじゃないか。
なのに謝るなんて変だぞ。
「でも・・・サンキューな」
走ってきたせいか、ほんのり頬をあかくして息を切らせる和希。
目と目が合うと、和希はふんわりと微笑んで。
心臓がドクンと高鳴った。
・・・高鳴ったって・・・なに俺、意識してんだよ。
な、なんだか顔が熱い・・・

「さ、行こうか。早くいかないと、売り切れちゃうかもしれないぜ」
一息ついて、和希はそう言ってニッと笑う。
「ええっ?売り切れるものなのか?」
「そうさ。人気商品はいつだって競争なんだぜ。さ、行くぞ、啓太!」
「うわっ!」
和希に手をとられ、俺たちはまた走り出した。
「か、和希っ・・・て・・・手!」
「え?いいじゃないか、このまま手つないでいこうぜ!」
「ええーっ!」
重なった手から和希のぬくもりが伝わってくる。
こんなところ人にみられたら恥ずかしくてしようがないけど、無理にふりはらうほど、イヤじゃない。
じつはそんなところにつけこまれてる気もしなくはないけれど、これが和希流の好意の示し方ならば、
俺は甘んじて受けたいと思う。
・・・だけど、走っているからではないこの動悸のことを考えると、
過保護なまでのこの和希の行動に俺が慣れるには、もう少し時間がかかりそうな気がするなぁ・・・

お題 【目と目が合い、微笑んで。あっ・・・・頬が熱い。】 MVP戦前設定。
まだ出会って間もないのに、妙に積極的な和希。
そりゃもう内心は、なんとか啓太にとって一番の友達になろうと必死の和希ですから。
てゆーか、手とかつなぎながら昔の小さな啓太と手をつないだこととか思い出してるに違いないです。
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