Peanuts Kingdom 学園ヘヴン

プライベートタイム

眠りの浅い朝は、ささいなことでも目が覚めてしまう。
軽く、ベッドが揺れる感覚に、俺はふっと眠りから覚めた。
ベッドの中は暖かかったけど、
自分がなにも身に着けていないことに気づいて、
ああ・・・昨夜は和希と一緒に寝たんだっけと思い出す。
その和希はというと、俺は背をむけていたからよくわからないけど、
どうやらもう起きているらしい。
俺を起こさないように、ずれた毛布を元に戻しながら、
そうっとベッドから立ち上がった。
俺を置いてどこに行くんだよ、なんて、
ずいぶん甘えたわがままが頭をもたげたけれど。
ぱた、ぱた、と裸足の足音がバスルームの方へ向かうのを聞きながら、
俺はもう一度しっかりと目を閉じた。

・・・いつのまにか二度寝をしてしまっていたらしい。
ジャブジャブと、なにかを洗っているような音に続いて、
そり、そり、と不思議な音が聞こえる。
なんだろうなーって、ぼうっとした頭で考えて、
すぐ、はっと気がついた。
もしかして、和希のやつ、ヒゲそってる?
目を開けると、たしかにバスルームの方が明るくなっていて、
音はそこから響いてくる。
薄く影が外まで伸びてて、和希が動いているのがわかる。
なんか・・・ドキドキする。
男なんだから、ヒゲがはえるのはあたりまえのことだし、
俺と同い年のやつでもヒゲぼーぼーのやつとかいるし。
たまたま俺はヒゲが薄いから、ヒゲソリなんてのもあまりしないだけで、
和希なら・・・本当は俺よりずっと年上で、大人な和希なら、
ヒゲソリしないですむほうがおかしいんだ。
でも・・・なんでだろう、すごくドキドキする。
急に、本当の和希の姿をみせつけられたような気がして・・・

俺はそうっと起き上がった。
かけていた毛布を肩にかけて、肌がみえないくらいしっかり体をくるんで。
そうっと、そうっと、和希に気づかれないようにバスルームに近づく。
そして、こっそりと・・・バスルームの中をのぞいてみた。

そり、と銀色に光るかみそりが、和希のあごをすべっていく。
だいぶそりおわってしまったらしく、それでもところどころにシェービングフォームの泡が残っている。
しっとりと濡れた髪。
上気した肌。
朝のシャワーを浴びたばかりの大人の男の姿がそこにあった。
「っ・・・」
心臓が、苦しいほどに高鳴る。
かああっと頭に血がのぼってしまって、立っていられない。
俺は叫びそうになる口を手でおさえて、その場にしゃがみこんでしまった。
意味も無く、目に涙まで浮かんでしまう。
"かっ・・・かっこいい・・・っ"
もう一度、ちら、と見上げると、鏡の中の和希の表情がみえた。
最終チェックとばかりに、顔の角度を変えて、あごをさすったりなんかしている。
それは本当は変な顔だったりするんだけど、今の俺にはなにもかもかっこよく思えてしまう。

ザブザブと顔を洗う音がして、ゴボゴボと溜まった水が流れていく音がした。
パチン、と明かりが消され、それと同時にバスルームから和希が出てきた。
「ふーっ・・・・・・うおあっ?!」
俺がバスルームの入り口わきに毛布をかぶってうずくまっているのをみつけた和希は、
素っ頓狂な声をあげてのけぞった。
「け、啓太?!なにやってんだよ、こんなとこで」
「〜〜〜・・・っ」
俺は真っ赤な顔して和希をうらめしそうに見上げるので精一杯。
なにも言えないよ。
あんな・・・かっこいいとこみせられちゃって。
あらためて、和希が大人の人なんだってこと思い知らされちゃって。
和希の放つ色気にすっかりあてられちゃって、もう、俺・・・
でも和希はそんな俺の気持ちを知るはずもなく、
しゃがみこんで俺の顔をのぞきこんでくる。
「どうしたんだよ・・・そんな泣きそうな顔をして。怖い夢でもみたのか?」
「っ、ちがうよっ・・・」
「じゃあどうしたんだよ?」
くしゃ、と髪をまぜられる。
そんなことされたら、俺・・・ますますダメになっちゃう。
和希に甘えたくなっちゃう。
ダメだと思っていても、我慢していても、
こみあげてくる想いには抗えず、目に涙が浮かぶ。
「啓太・・・?」
「っ・・・和希の・・・ばかあっ」
どんっと和希を押しのけ、俺はベッドに逃げ込んだ。
もう、落ち着くまでこうしてるしかないっ
頭から毛布をかぶって、体をまるめて、
貝のようにじっとしてこの衝動がおさまるのを待つしかなかった。
「啓太?!」
当然、いきなりばかなんて言われて驚いた和希は、
まるくなった俺の背中をゆすったり、さすったりしてる。
「おい、啓太、いったいどうしたんだよ?俺、なんかしたか?」
そんなこときかれたって、言えるはずがない。

和希のヒゲソリしてる姿に欲情しちゃいました、なんて・・・

「啓太、けーいーた?なにか悪いことしたなら謝るからさ、ちゃんと理由話せよ」
「いーやーだぁっ」
「えぇ?!っ・・・ちょっと、啓太ぁ?!」

・・・結局、俺は理由を言うことはなく。
少し落ち着いたところで和希にコーヒーをいれてもらって、ちゃんと起きる気になれたけど。
・・・ちょっと今日の俺は、使いものにならないかも。
そんなことを思いつつ、ふと和希に視線をやると、
なにも知らない和希は「うん?」とにこりと微笑んだ。
・・・その笑顔がなんだか癪にさわって、
俺はおもいきり和希の額にデコピンをしてやった。

一日中、逆恨み啓太にいじめれらまくることになるであろう和希さんに合掌。チーン♪
啓太がヒゲソリというのもなんだか可愛いなぁ。
ぜんっぜんはえてないのに、オトナのフリしてがんばっちゃったりなかしてね〜v
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