Peanuts Kingdom 学園ヘヴン

むしさされ

夕食を済ませ、部屋に戻って明日の準備などしていると、
コンコン、と聞きなれたノックの音がした。
「啓太か?入れよ」
勝手知ったるなんとやらというやつで、和希もわざわざ出迎えたりなんかしない。
啓太の方も、
「おじゃましまーす」
なんて言って、躊躇せず部屋に入ってくる。
座っていた回転椅子をくるりとまわして振り向けば、
啓太はちょこんとベッドに座っていた。
「どうしたんだ?」
すると啓太はちょい、と自分の二の腕を指差した。
「なんか蚊にくわれちゃったみたいでさ。和希、むしさされの薬なんか持ってないか?」
みてみればたしかに、ぷっくらと赤く腫れてる箇所がある。
「結構大きく腫れてるな・・・痒そうだな」
「痒いんだよ〜実は他にもさされてるところがあってさ。足とか」
啓太が足をひねってこちらにみせる。
ふくらはぎにも一箇所さされてるところがあった。
「なんかずいぶん好かれたもんだな」
「いったいどこでくわれたんだろ。風呂入ったあとなんだよな・・・和希は蚊にくわれてないのか?」
「俺は・・・大丈夫みたいだな。啓太の血の方がおいしそうだったんだろ」
「え〜、嬉しくないよ・・・あぁ、もう、かゆい〜」
掻く代わりに腫れた箇所をつめで十字に刻んでいる。
そうすると痒みが一時的におさまるというおまじないみたいなものを真面目にしてる啓太に、和希はふと苦笑をもらす。
「でも俺ももってないよ、むしさされの薬」
和希がそう言うと、啓太はすこしがっかりしたような顔をして、
「そっかぁ・・・誰か他に持っていそうなやつって・・・」
と思案顔になった。
篠宮さんなんか持っていそうだな・・・それか俊介とか。
外で運動してる人なら持っていそうだけど・・・
「啓太」
「うん?」
呼ばれて顔をあげると、和希は椅子の手すりに頬杖ついて啓太にニコリと微笑みかけた。
「どうして蚊にさされると痒いかって知ってるか?」
「えっ?それは・・・血を吸われるから?」
「ブー。蚊に刺されたときに注入される唾液の中に血液を固まらせないための成分が含まれているからなんだって」
「へぇ〜」
「だからさ」
和希の笑みがすこし深くなる。
その意味ありげな笑顔には見覚えがある。
「え?」
啓太の本能が警鐘を鳴らす。
和希がこういう顔をするときというのはたいてい・・・変なことを考えているときだ。
おもむろに椅子から立ち上がって、ベッドの啓太の隣に座った和希は、
くいっ、と啓太の腕をとった。
「和希・・・?」
和希はぺろりと舌を出した。
「注入された蚊の毒を、吸いだしてやればいいんだよ」
「は?」
きょとんとする啓太に、和希は満面の笑みを浮かべた。
「俺が吸い出してやるよ」
「いっ!?」
啓太はとっさに腕を引こうとしたが、それより前に、和希の唇が啓太の腕に触れた。
「っ!」
肌を舌がなぞっていく。
ざらりとした舌の感触に、背筋がゾクゾクしてしまう。
クッ、と息をつめて目を閉じる啓太を、和希は満足げに笑って見上げた。
腫れた箇所に軽く歯を立てかじる。
チュ、と音をたてて吸い上げると、啓太の体がピクンと震えた。
「・・・どうしたの?」
「〜〜〜っ!」
欲情を秘めた瞳でみつめられ、啓太は言葉を失う。
耳まで真っ赤になって、すこし目も潤んでしまっている啓太の様子に和希のイタズラ心もうずいてしまう。
唾液をぬりこめるように親指の腹で蚊に食われた箇所をこすりつつ、
「どう?少しは痒み、おさまった?」
と、しれっと、あくまで "痒み止めの行為" である風に装う。
啓太はうらめしげに和希をにらんだ。
「こ・・・こんなんでおさまるわけないだろっ」
「うん?まだ足りない?」
「っ!やっ、も、もうっ・・・だから、もういいって!」
啓太は和希の腕をふりはらおうとしたが、和希がそれを許すはずもなく。
「えーんりょするなって〜、痒くて眠れないんだろ?」
かえってころりとベッドの上にあおむけに転がされてしまう。
啓太は腕へのキスに感じてしまった自分を見透かされてしまったあげく、
こんな強引な展開にもっていかれてしまい、なんとか逃れようとじたじたもがいた。
「そ、そんなこと言ってないっ」
「寝てる間に痒くて掻きこわしちゃうかもしれないだろー?」
「だ、だから、誰かに薬もらってくるって・・・っ」
「もうこんな時間だし、もうみんな寝てるって」
「っ、ま、まだ10時だろーっ!」

その後、腕やらふくらはぎやら、その他いろんなところを "痒み止め" と称してキスされてしまって。
翌朝、啓太はあちこちに散らされた "和希に食われた痕" に悲鳴をあげるのであった。

エロなんだかアホなんだかわからないお話になってしまいました・・・アホですよね、やっぱ。
夏5題から同名題「むしさされ」でした。
これ、和希がちゃんと薬もってたら、薬手渡してオヤスミー、で終わってしまいますな(笑)
首から上へのキスよりも、腕とか指とかへのキスの方がなんだか色っぽく感じちゃいます(///)
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