Peanuts Kingdom 学園ヘヴン

日 9:00

時計を見たら、まだ9時になったばかり。
和希との約束は10時だから、まだ1時間もある。

このところ忙しくて、学校でもろくに顔をあわすことがなかった和希。
昨日も土曜日だというのに、学園をみにくるお偉いさん方の接待とかで、
夜遅くまで出かけていた。
でも。
それもみんな今日のために和希ががんばってのことだから、
寂しいことにちがいはないけれど、俺も、じっとガマンしてた。

廊下ですれちがいざまに頭に置かれた手。
やさしく微笑む瞳。
たったそれだけのことでも俺はドキドキして、それからしばらく和希のことで頭がいっぱいになる。
両想いなのに、恋人同士なのに、
二人きりの時間をとれないときは、まるで片思いみたいで・・・切ない。

でも今日は和希と久しぶりのデート!
二人でおもいきり楽しむんだって思ったら、昨夜はなかなか寝つけなくて。
そのくせ朝は早く目が覚めちゃって。
忘れ物したりしないように、変な寝癖とかついてないように、
注意深く時間をたっぷりかけて用意してたはずなのに、
それでもまだ約束の時間まで1時間もある。
和希はもう起きてるかな?
それとも疲れて、ぎりぎりまで寝ちゃってるのかな?
眠ってたとしても、もうそろそろ起きてもいい頃だよな・・・
俺は携帯を手にとってピッ、とメール新規作成ボタンを押す。

『おはよう和希。
もう準備できちゃった。
いつでも出かけられるぞ。』

このメールをみたら急がせちゃうかなと思いつつも、ピッと送信ボタンを押した。
いままでずっと待ってたんだもの。
ずっとガマンしてきたんだもの。
待ちきれないって気持ちを素直に伝えたっていいじゃない?
ベッドにころんと転がって、あ、髪をセットしてたのに、ってはっとしたけど、
きっと和希の準備ができるのはもう少し先だろうから。
時間になったらまたセットをしなおしたらいいやと、そのまま寝っころがって、携帯をいじってた。
すると。

コンコンッ

「え」

不意のノックにがばっと起き上がる。
まさか。でも、もしかして?

ドアを開けるとそこには和希が。
しっかり出かける準備もできてて、爽やかな微笑を浮かべている。
「おはよう、啓太」
「えっ、えっ、ど、どうして・・・」
「どうしてって、啓太が準備できてるっていうから来たんだぜ?
約束は10時だったけど、お互いせっかく早起きしたんだ。早めに出かけようぜ」
まさか和希もしっかり準備ができてたなんて、予想外のことに俺は開いた口がふさがらない。
言葉も失っている俺の髪に和希はそっと触れてきて。
「準備完了って油断したな?髪、寝癖ついてるぞ」
「えぇっ!うっわ、うそっ、ちょっと待ってて、直してくるっ」
俺ははじかれたように部屋に戻り、あわてて鏡の前に立った。

――驚いた。
まさかこんな早く、和希もしっかり準備万端整えていたとは。
それに、こんな早く、和希に会えるなんて・・・嬉しさに、頬が上に引き上げられる。
「啓太はまだ寝てるかと思ったんだけど、意外と早く起きてたんだな。
もしかして、昨夜から今日が楽しみで眠れなかったとか?」
図星をつかれてウッと一瞬言葉につまったけど、でもそれって和希も一緒なんじゃ?
「和希こそ、俺に会うのが楽しみで朝、目が覚めちゃったんじゃないの?」
「そうだよ」
さらりと肯定されて、ぎょっとして振り返る。
いつのまにか後ろに立っていた和希の腕がからだにまわされて、そのまま抱きしめられた。
片手にブラシという中途半端な格好だったから、和希の背中に腕をまわすこともできず、
「和希・・・?」
とおずおずとたずねるので精一杯。
見上げた瞳が和希の瞳と合うと、和希はふっと微笑んで俺のこめかみにキスを落とす。
「・・・もう、このまま啓太のこと、ずっと抱きしめていたいくらい・・・啓太に会いたかった」
「和希・・・」

俺も。
俺もずっとこうされたかった。和希に抱きしめられたかった。
ことん、と頭を和希の肩にあずけ、すうっと和希の香りを吸い込む。
和希の手が、優しく俺の髪をなでている。
気持ちがよくて、うっとりする・・・

「でも。せっかくの日曜日だ。早起きもしたことだし、どっか出かけようぜ」
俺としては、なんかもう出かけることなんてどうでもよくなりかけてて、
いっそこのまま俺の部屋で二人きりで過ごすのもありなんじゃないかって思ってたけれど。
和希がそうしたいのならそれでもいい。
出かけるのを楽しみにしてたのは俺も一緒だから。
「うん!俺、今日のために雑誌でいろいろ調べたんだ。新しい店とか」
「へぇ、じゃ、期待しておこうかな」
「あぁ、ばっちりまかせとけよ!」
そう、今日はまだはじまったばかり。
今日という日を待ちわびてて、おもいっきり楽しむぞという気持ちは同じ。
俺は和希と見合って、にっこり微笑み合った。

同じく準備万端整っていた和希、啓太からメールがなければ、
律儀に10時まで待っているつもりでした。えぇい、この、思いやり夫婦が!(笑)
まぁ、さすがに朝の9時からナニするのもアレなので、ここは健全にいきましょーや!
もちろん。
夜はお楽しみのムフフでしょうv
もしお気に召しましたら拍手をポチしてくださると嬉しいですv

上に戻る