Peanuts Kingdom 学園ヘヴン

君と過ごしたいクリスマス

寮で開催するというクリスマスパーティーに誘われた。
一つは王様から。
そしてもう一つは女王様から。
「まぁ、そうくることは予想してたけどな・・・で、啓太はどうしたいんだ?」
和希は苦笑して俺をみる。
「どうしたいかって・・・俺は・・・」
和希の視線をうけて、俺はおもわず口をつぐむ。
脳裏をかすめた淡い期待に、頬がふわりと熱くなる。

王様のパーティーは、大勢の人が集まってくるだろうから楽しそうだ。
反対に、女王様のパーティーは、騒がしくなく落ち着いた雰囲気にひたれそう。
どちらも参加したらしたで楽しいことには違いない。それに。
「和希はどうするんだ?」
「俺?そりゃ、啓太が参加する方に行くに決まってるだろ」
「っ・・・そ、っか」
和希が一緒にいてくれれば、どちらに参加したって楽しいに決まってるんだ。
だけど。
本当は、俺は。

「和希はどうしたいんだ?」
本当のところ、和希がどう考えているのか知りたくてそうたずねると、和希は
「啓太と一緒なら、どっちでもいいよ」
と、にこりと微笑む。
俺と一緒なら、どちらに参加してもいい、ということは。
俺と一緒なら、どちらにも参加しなくてもいい、のか?

俺がだまったままなのを、迷っているせいと思ったのか、
和希はまぁまぁと言って俺をなだめる。
「まだ日はあるし、ゆっくり考えて決めればいいさ」
「それはそう、なんだけど・・・」
でもそうじゃなくて。
俺が本当にしたいのは、こういうことじゃなくて。

俺は、和希と一緒にクリスマスを過ごしてみたい。
和希と二人きりで。
この学園で初めて迎えるクリスマスを、和希と一緒に過ごしたい。
具体的になにをしたいのかって、そういうのはぜんぜんないんだけど、
クリスマスってやつは人をロマンチストにするんだ、きっと。
ただ、誰にも邪魔されずに、和希と二人きりの時を過ごしてみたい。
こんな風に思うのは自分でもおかしいってわかってる。
みんなでワイワイ騒ぐのも楽しいってこともわかってる。
でも今年のクリスマスはなぜか・・・和希と二人きりでゆっくり過ごしてみたいって・・・

学園内も、学園の外も、
街はクリスマスイルミネーションに彩られてキラキラしてる。
そんな景色をみるたびに、隣に和希がいてくれたらと思ってしまう。
俺が綺麗だなと思うものを、きっと和希なら一緒に綺麗だって言ってくれると思うから。

和希と視線を交わして、
綺麗だね、って言って。
そして・・・和希と・・・・・・

「啓太?どうしたんだ?ぼーっとして」
「へっ?・・・っ、あっ、え、ええと・・・っ!」
和希に声をかけられ現実に引き戻された。
うわわ、俺ってばなにやってんだ!恥ずかしさに頭にかぁっと血がのぼる。
「なーに考えてたんだ?」
和希のやつ、俺の顔が赤くなってるのにきっと気づいている。
にやにやしながら俺の顔をのぞきこんでくる・・・やめろよ〜っ
「なんでもないっ!」
「なんでもない、って感じじゃないぞ?クリスマスってきいて、なにか連想してただろ」
「っ、なんでもないってば・・・っ」
「ん〜、でもまぁ、な。男ばかりのクリスマスパーティーっていうのも、華がないというか、むさくるしいというか。
世間一般のきらびやかなものには程遠そうだけどな」
「っ・・・」
和希の言葉に、ひやりとしたものが背筋をおりていく。
それはそう、だよな・・・
「そんなこと・・・言ったってしかたがないだろ。クリスマスに一緒にいれるような彼女なんて、和希にだっていないだろ!」
知ってることだけど、絶対認められないことだからおもわず口調が強くなる。
すると和希は意味深な笑みを浮かべてちらりと視線をこちらに送ってきた。
「さぁ?彼女つくろうと思えば、今からでも遅くはないんじゃないか?」
「っ・・・かっ、和希ぃっ?!」
心臓がつかまれたように痛んだのと同時に俺は思わず和希につめよってしまっていた。
そんなこと・・・そんなのこと、絶対にいやだ!
和希は驚いた顔をして俺をみつめていた。
「おい、そんなむきになるなよ。冗談だって」
「っ・・・・・・」
たとえ冗談でも、そんなこと和希の口からききたくない・・・
男より女の子の方がいいってことくらい、俺だってわかってる。
でも、俺は・・・!

和希から離れて背を向ける。
「啓太?」
・・・なんでこんなに胸が痛いんだろう。
なんでこんなに心が乱れる?
俺が勝手に自分の都合のいいように抱いていた幻想を、
それは夢だ、幻だと、冷たい現実をつきつけられた。
それでもやっぱり俺は、和希と一緒にいたい・・・クリスマスは和希と一緒に過ごしたいんだ・・・

「俺・・・クリスマスパーティーには行かない・・・」
「えっ?」
「行っても、和希の言うとおり、むさくるしいだけだろうし。クリスマスくらいは静かにしていたいもんな」
「啓太・・・!」

後ろで和希が息をのむのがわかった。
そして間をおかずに和希が俺の目の前にまわりこんだ。
「ごめんって、悪かったって。俺が変なこと言ったから・・・ごめん!」
「・・・・・・」
和希の表情が悲しげにゆがむ。
「啓太・・・クリスマスは静かに過ごしたいって、本当にそう思ってるんだったらそれでもかまわない。
だけど、それでも俺は、おまえのそばにいてもいいだろ?」
「和希・・・」

凍りかけた心に、ふわりとぬくもりがさす。
両肩におかれた手から、和希のぬくもりが流れ込む。

「・・・俺と一緒にいてもむさくるしいだけだぜ?」
「俺が啓太のことそんな風に思うわけないだろ。啓太が俺のこと、むさくるしいって思ってるなら・・・アレだけど・・・」
和希の視線が斜めに落ちていくのをみて、今度は俺があわてた。
「そんなことないっ!俺っ、和希と一緒にいれたらそれでいい!」
「・・・啓太」
思わず飛び出た本音に、はっと口をおさえたけど、時すでに遅し。
和希はきょとんとした顔で俺をみつめている。
「〜〜〜っ」
ごまかす言葉が見つからず、なんて返したらいいのかなにも出てこない。
こんなこと言っちゃって、冗談めかす余裕もなく、マジで告白しちゃって。
恥ずかしくて恥ずかしくて顔から火が出そう。
「・・・啓太も、俺と一緒にいたいって、そう思ってくれてるんだ?」
「っ・・・」
口を手でおさえたまま目の前の和希をみると、和希は嬉しそうな表情を浮かべていた。
「なっ・・・なに笑ってるんだよっ」
俺のことをバカにしてるのか?!と一瞬思ってしまったけれど。
「え、だって嬉しいじゃないか。これっていわゆる両想いってやつだろ?
お互いそう思ってたってことなんだから・・・クリスマス前に見事カップル成立ってやつ?」
「なっ・・・和希ぃっ?!」
「ハハ、冗談、ジョーダン!でも、もし本当にそれでいいならさ、俺達二人だけでクリスマスパーティー、やらないか?」
「えっ・・・」
「もちろん、やっぱり王様たちとにぎやかに過ごしたいというならそれでも――・・・」
「やるやる!二人でやろう、クリスマスパーティー!」
和希が言い終わらないうちに、俺は和希の提案を受け入れた。
だってそれこそが俺が本当にやりたかったことだから。
和希がそうしてもいいって言ってくれたことに、喜びに胸が震える。

優しい和希。
どうしてこんなに俺のワガママにつきあってくれるのか。
期待するなという方が難しくないか?
早速あれこれ二人のクリスマスのプランについて話し始める和希の横顔をみつめつつ、
過度にふくらんでしまいそうな都合のいい想像を懸命におさえていた。

啓太→和希という片想い創作は書いてて本当に難しいです〜(TT)
てか、ここまで恋愛感情をつのらせている(自覚してるかどうかはともかく)啓太を、
あの和希がほうっておくわけがないってのが頭のどこかにありまして・・・
てか、あえてほうっておいているとしたら、意地悪ですよね、和希ってば(笑)
でもまぁあえてのことだとしても、このクリスマスできっとキメてくれるでしょうvvv
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