Peanuts Kingdom 学園ヘヴン

無意識の誘惑

「俺の部屋、来る?」

和希の言葉に、一瞬息が止まる。
授業で出た課題について効率的にかたづける方法をあれやこれやと話し合っていたのだけれど、
学校から寮へと向かう帰り道すがらでは時間が足りなくて結論が出てなかったから、
まだ話をしようか?という意味での和希の言葉なのだけど。

和希の部屋に二人きりでいると、どうしたって意識してしまう。

周囲の目を気にすることなく、互いの想いを確認しあうことのできる空間。
ぬくもりを求めて寄り添うことも、
恥ずかしくて赤面するような甘い戯れごとも、
二人きりのこの場所でならいくらでもできる。
ようやっと二人きりになれたのだから、甘い時間を過ごしたいとも思ってしまう。
でも。
和希はきっとそんな気なくして、こうして俺を誘ってるんだろう。
そんな平気な顔をして。
俺なんて、部屋に誘われただけで、もう、こんなにドキドキしてしまっているというのに。

「どうした?」
「えっ、あっ・・・うん、なんでもない!」
「・・・で、どうする?」
「ああ、うん、いいよ」
「OK」
和希はにこりと微笑んで、先に立って歩き出す。
俺はお邪魔する側だから、ほんの少し、あとから歩く。
意識しすぎなのはわかっているけど、なんだかこういうのも恥ずかしい・・・
友達の部屋に行くだけだろと言い聞かせてみるけれど。
下心がある俺自身が、恥ずかしい。

ガチャリと鍵があけられて、どうぞ、と中へ招かれる。
締め切られていた部屋から流れでる、濃厚な和希の香りに、くらりとめまいがする。
きちんと整えられたベッドの上が俺の指定席。
和希はそんな気はないのだから、俺だって平気なフリをしてなければ。
普段と変わりないように、さりげなくベッドに座る。
「さっきも言ったけど、ある程度ならうちの図書室でも調べられると思うぜ。パソコンもあるし・・・」
和希は話の続きをしながら、するりとジャケットを脱いで椅子の背もたれにかける。
そんな一挙手一投足にも、意識が集中してしまっているのがわかる。
次はどんな行動を起こすのか・・・期待しているのか警戒しているのか、自分でもわからない。
「でもやっぱ実物をみた方がいいとは思うけどな」
そう言ってふりかえった和希とばっちり目があってしまった。
「っ、うん、そうだね」
あわてて話をあわせたけれど・・・
「・・・啓太?おまえ・・・ちゃんと考えてるのか?」
「か、考えてるよ」
軽くにらまれるような視線が痛い・・・
和希の視線から逃れるように、ひざを抱えて肩をすくめた。
「・・・・・・」
空気が動いて、和希が俺のほうに近づいてくるのがわかった。
ぎし、とスプリングが鳴って、和希が俺の隣へ上がってくる。
「啓太?」
「っ・・・」
和希の気配を間近に感じてしまえば、どうしたって胸の鼓動が高まってきてしまう。
俺を怪訝にみつめているであろう和希の視線を意識してしまえばしまうほど、
顔が耳まで熱くなっていくのがわかる。
「啓太・・・どうかしたか?」
ぽん、と肩に手をそえられ、俺は反射的にビクッとしてしまった。
そんな俺に和希は驚いたようだ。
「っ・・・悪い、啓太。大丈夫か?」
「あ、ご、ごめん・・・っ」
本当に、俺って異常。
俺はひざをかかえていた手を離し、ぱっと足を伸ばしてリラックスを装う。
「ちょ・・・ちょっと疲れてるのかも。大丈夫だよ」
う〜んと伸びをしてみて、和希に笑顔をむけたけど、和希は心配そうな顔をしたままだ。
「疲れてる?大丈夫か?」
「ウン!大丈夫、大丈夫!・・・っ」
さら、と、前髪を指ですかれ、額に和希の手のひらがおしつけられた。
つめたくて、優しいその心地よさに、おもわず目を閉じる。
「・・・熱があるわけじゃないな。啓太はすぐ、無理をするから」
和希の手が、そうっと俺の頭を後ろへなでていく。
頭をなでられるのって、子供あつかいされてるみたいでイヤだと思っていたけど、
和希にならいくらでもなでていて欲しい。
俺が和希にとって大切な存在であることを、一番感じることができるから。

「・・・まったく、大きくなっても甘えん坊だな」
「え・・・」

頭をなでていた手が止まった。
そして、その手はそろりと肩にまわって、和希の方へとグッと体を引き寄せられた。
「な・・・っ」
頬が和希の胸元に押し付けられ、シャツ越しに和希の熱が伝わってくる。
なにをするんだと問う前に、和希が低い声で囁いた。

「啓太・・・かわいすぎ」
「っ?!」

驚く俺の反応などお見通しとばかりに、和希はククッとのどの奥で笑う。
「なんだかあつ〜い視線を感じて、まさかなと思っていたんだけど・・・」
「あ、あつい視線て・・・」
「俺のこと、ずっと見てただろ?なにか言いたげな瞳をして。
さっき、あんなに満足げな顔みせられたらさ・・・甘やかしたくなるじゃないか」
和希の熱っぽい囁き声に、背中がゾクリとした。
こうなることを望んでいたくせに、それを指摘されてしまえばまた恥ずかしさが募る。
和希の胸に手をついて押し返したけど、そんな俺すら和希は余裕の笑みを浮かべてながめている。
「恥ずかしがってるのか?」
「っ・・・う、うるさいっ」
「あ、そう?じゃあ、さっきの課題の話の続きでも・・・」
「えぇっ?」
思わず出てしまった抗議めいた自分の声にぎょっとした。
和希のやつはにやにやしてる。
「素直なんだか素直じゃないんだか・・・そんなところもかわいいけれど」
「〜〜〜っ」
なんかもう、俺の気持ちなんてすっかりバレバレ。
俺ももう、恥ずかしいのと、和希に抱きしめてもらいたい気持ちとで頭の中がぐちゃぐちゃ。
少し離れたところからそんな風に俺のこと観察してるなんて・・・和希、意地悪すぎだ!
こんなのはもうイヤだと、和希に背を向けるように体をひねると、
すかさず背中から和希の腕がまわされた。
「・・・スネるなよ。こうして抱いててやるからさ」
耳元でやさしく囁かれ、俺の心臓はMAXの速さで鼓動をうつ。
「それとも・・・・・・シちゃってからにする?」
「っ!」
俺の返事を待たずに、熱い和希の舌が俺の耳をなぞる。
それだけで、全身をしびれるような快感がはしる。
前にまわされた和希の腕をきゅうとつかんで震えそうになるのをこらえていると、
耳に触れたままの唇が動いて。
「啓太からのお誘いなら・・・いつだって大歓迎だよ」

俺が和希を意識している時って、無意識のうちに和希を誘惑してしまってるのだろうか。
そうだとしたら、やっぱり恥ずかしい・・・
でも、こうして和希に抱かれることを、やっぱり望んでいたのだから。
俺を組み敷く和希の背中に腕をまわし、俺はきゅっと目を閉じた。

和希は和希で、啓太に対しては年中発情期状態だと思います(笑)
だから啓太の無意識の誘惑も、キャッチできちゃうんですよ、きっと!
好きな相手を意識してモニョってる和啓はかわいいですv
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