Peanuts Kingdom 学園ヘヴン

一日の始まり

いつものように、携帯の音で目が覚める。
音をとめて、起き上がって、ベッドの上で大きくひと伸び。

春から始まった新しい生活。
それにもだいぶ慣れてきて、いつもと変わらぬ朝、と思えるようになった。
でも今日からは、俺にとって奇跡の日々が始る。

はやる気持ちをおさえつつ、しっかり身支度。
学園の制服姿も板についてきた。
まさか自分が理事長をつとめる学園の制服を着る日が来るなんて、予想だにしていなかったけど。
なかなか結構サマになってるじゃないか?

昨日、久しぶりに会った啓太の瞳が忘れられない。
人懐こい印象の、大きく綺麗な瞳。
ずっと夢にみてきた。
啓太と再会できる、その日のことを。
俺をみて、啓太がどんな顔をするのか、なんて思うか、
期待と不安で、いつになく気分が高揚している。
胸が、どきどきする。
俺は、おまえにとって、いい友達になれるだろうか。
おまえにとって、必要な人間になれるだろうか。
俺にとって、啓太が特別な人間であるように。

閉じられたドアの向こう。
こないだまで空き部屋だったこの部屋に、啓太がいる。
コンコン、とノックをして、
「おい、啓太。俺だけど」
と声をかけてみる。・・・返事はなし。
あれ?と思って一応時計を確認するけど、結構いい時間。
まさかと思って、今度はもう少し強めにノックをしてみる。
「おい、啓太、起きてるか?」
すると、
「ウン?・・・起きてるよ」
と、寝ぼけた声。
こいつ・・・起きてないだろ、絶対。
「啓太。おい、大丈夫か?」
「・・・大丈夫だよ、ちゃんと・・・起きてるって・・・」
「啓太・・・」
かなり、心配。
カギがかかってなければ部屋に入ってたたきおこしてやるものを。
「啓太、本当に起きてるのか?」
「っ・・・起きてるって。大丈夫。・・・でも、まだ用意に時間かかるから、先行ってろよ」
「う・・・」
先行ってろって・・・本当に大丈夫なんだろうか。
でもこれ以上しつこくして、変に思われるのは避けたい。
それにたぶん・・・昨日会ったばかりの単なるクラスメートなら、
ここで引き下がるのが普通、だよな。
「・・・わかった。じゃ、先行ってるな。少し急げよ。教室まで、ここは結構距離あるんだからな」
「オーケー」
「・・・・・・」

寮を出て教室へむかう道すがら、俺はもう後ろ髪をひかれる思い。
昨日もいろいろあったし、疲れがでてるんだろうけど、初日から遅刻とかってシャレにならないぞ、啓太。
・・・って。
ふと気づけば頭の中は啓太のことでいっぱい。
シャレにならないのは俺のほうか・・・

俺を慕って、俺のあとをついて歩いた啓太のことが忘れられなくて。
そんな啓太を、俺の都合でこの学園に入学させた。
だから・・・啓太にはこの学園で楽しく過ごして欲しい。
そのために俺は、どんなことでもする。

この自分でも驚くほど強い想いは心に秘めて。

でもせめて、友人として啓太の一番近い場所にいれますようにと願って。

登校初日に遅刻した啓太のエピソードの和希サイドでした。
あきらかに寝ぼけていたはずであろう啓太をほっぽって、一人ちゃっかり登校する和希。
でもじつは内心こんな葛藤があったりして。
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