Peanuts Kingdom 学園ヘヴン

待ち人来たりて

もう、みんなは寝ているだろう。
静まり返った寮の廊下を、猫のように足音を忍ばせて歩く。
ドアのノブに鍵をさしこむときも、音を立てないように細心の注意をはらって・・・

なのに。

「・・・・・・っ?!×○△□※〜〜っ?!?!」

そんな俺の努力を遙かかなたに吹き飛ばす、
強烈な光景が俺の目に飛び込んできた。

「・・・・・・啓太・・・?」

いつからここにいたんだろう。
パジャマ姿の啓太が、俺のベッドで丸くなって、
すぅすぅ寝息をたてている。

ドアは鍵がかかっていた。
でも、窓は・・・啓太がいつでも俺のとこに来れるように、鍵はあけておいていた。
物騒だからやめろと啓太には言われたけど、別に盗られて困るようなものはないし。
それに、啓太に、合鍵渡されるのとどっちがいい?ときいたら、
窓を開けておくのをしぶしぶ了承してくれたんだ。

今まで、俺に無断で窓から入ってきたことはなかったけれど・・・
なんで今夜に限って?啓太・・・

ふと、ズボンのポケットの中に入れていた携帯がブルブル震えだした。
こんな時間にメール?
急いでみてみると、そこには啓太の名前。

え?

ベッドで眠っている啓太の顔を携帯の画面を見比べてしまう。
なんで?

ぱか、とあけてみると、そこには啓太からのメールが着信していることを示すマークが。



『和希、誕生日おめでとう。俺、七条さんに教えてもらうまでぜんぜん知らなかったぞ。
お前、部屋にまだ帰ってないみたいだけどさ、時間ももう遅いけど、
ジュースとお菓子用意したから、ちょこっとだけ祝わないか?
和希の部屋で待ってるよ』



「啓太・・・」

たしかに小さなテーブルの上には、
ペットボトル二本とお菓子が用意されていた。
箱に入った小さなチョコケーキはバースデーケーキのつもりだろうか。

携帯サーバーのデータ送信遅延だな。
よくあることだけど、なにもこんな大切なメールを遅延しなくたって。



携帯を机の上に置いて、俺はそっとベッドに座った。
啓太はすっかり熟睡してしまっているようで、
俺がそっと髪を撫でても気づかない。

「啓太・・・」

俺を、友達として大切にしてくれて。
俺ですら忘れていた誕生日を祝おうとしてくれただなんて。
啓太の俺に対する気持ちが嬉しくて・・・泣けてくる。

無防備な笑顔に、俺に向けられる好意に、
俺は何度もこみあげてくる想いをおさえこんできたけれど。

「啓太・・・」

身をかがめて、そっと啓太のこめかみにキスを落とす。

そして・・・頬と・・・

口元と・・・

やわらかな肌の感触に、胸が熱くなる。

「啓太・・・」

啓太の唇に唇を重ねてしまおうとしたその瞬間、

「ん・・・」

啓太が軽くみじろぎをした。
俺は反射的に体を起こして、啓太の様子をうかがう。

啓太は薄目をあけて、今自分の置かれている状況を把握しようとしている。

起きちゃったか・・・

「残念・・・啓太。おはよ。悪いな、待たせちゃって」
「あ、和希・・・あ〜、俺、ここで寝ちゃってたのか。悪い・・・ってか、今何時だよ」
「ごめん、ごめん。携帯もさ、なんか遅れてたみたいで。今さっきみたんだよ。
部屋に戻ってきたら、お前がいるんでびっくりしたぞ。でも・・・サンキュ、嬉しかった」
「あ・・・でもなんかしまりがないよな。俺、勝手にお前のベッドで寝ちゃってたし」
「ああ、そうだな。てっきりお前自身がバースデープレゼントなのかと期待しちゃっただろ」
「はぁ?!」
案の定、俺の言葉に啓太は真っ赤になって反論している。
・・・あぁ、わかっている。わかっているよ。

ひとしきり笑いあったあと、ふと、啓太がマジメな、でも少し照れくさそうな顔をして俺を見た。

「和希。誕生日、おめでとう」

「・・・あぁ。ありがとう、啓太」

和希の誕生日ということで、突発的に書いてみました。久しぶりにね!
でも和希の誕生日だから書いてみようと思う時点で、かなり和希が好きなんだなと、愛再認識(笑)
誕生日話なのに、なぜかしょっぱくなってしまいましたが、ただでは起きない和希さんです。
そのうちきっちり和啓ラブラブバカッポー!になってくれると、信じてますよ!
というわけで、和希、お誕生日、おめでと〜!(2009.6.9)
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