Peanuts Kingdom 学園ヘヴン クラブ ドリーム ヘヴン

クラブ ドリーム ヘヴン Boy's Side

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遠藤和希
01.招待客
02.ハント
02. ハント

、うちで働いてみないか?」

一瞬、なにを言われたのかわからなかった。
もう一度、目の前にいる和希さんの口から発せられた言葉を反芻してみる。
うちで、っていうのは、このクラブのこと、だよな。
働いてみないか、って・・・このクラブで働いてみないかってことは・・・

「えぇっ?!お、俺には無理ですよ!」

焦りのあまり、声がひっくりかえってしまった。
あわてて口をおさえたけどもう遅い。
和希さんはきょとんとした顔をしたのち、プッと噴出した。
「そんな即答で断られちゃうと、俺もかえす言葉がないな。そういう素直なとこ、俺は気に入ってるんだけど」
「か、和希さん?!」

和希さんがオーナーを務めるクラブ・ドリームヘヴンで、友達の啓太がボーイとして働くことになったときいてから、
啓太の応援と、様子見と称してちょこちょこお邪魔するようになった俺。
啓太の友達、ということで、いろいろサービスしてもらったりしてるうちにすっかり常連になってしまったけれど、
実際もてなしてくれるのはホスト見習いの啓太だったりする。
友達相手ということで緊張はしないものの、それなりにホスト修行をがんばってる啓太はけなげだ。
だけど、今日は啓太は店には来ていなかった。
が来るとわかっていたら、休ませたりなんかしなかったけど、なにやら妹さんに呼び出されたとかで。
ああみえて結構いいお兄ちゃんだからな、啓太って」
ため息まじりにそう説明してくれたのは啓太の代わりにドアボーイを務めていた和希さん。
オーナーみずからお出迎えって、そのことにもびっくりだったんだけど、
せっかく来たのだからと彼みずから俺をもてなしてくれるって言われたときにはもっとびっくりしてしまった。
だって普段和希さんは誰かのテーブルについたりしないって知ってるから。
啓太がいないと知ったときには、啓太に連絡しなかったことを後悔したけど、
今こうして隣に和希さんがいてくれて、俺の隣で微笑んでいる・・・
これってもしかしてすごくラッキーだったんじゃないかって、
今日、俺にはとくになにも告げずにお休みした啓太に、少しだけ感謝してみたりして。

「今夜はおとなしいんだな。いつも啓太といるときはよく笑っているのに。・・・もしかして緊張してる?」
不意に顔をちかづけられ、のぞきこまれるようにしてみつめられたりしたら、
そういうことにあまり慣れていない俺はどぎまぎしてしまう。
「だっ、だって、啓太といるときはべつにその・・・こういう雰囲気にはならないっていうか、友達だから・・・」
「こういう雰囲気って?」
「えっ・・・だ、だから・・・」
和希さんの瞳がすぅっとほそめられて、口元には余裕の笑みがうかぶ。
品の良い光沢をはなつスーツからは上品な香水がたちのぼり、
いやがおうにも和希さんの男の魅力にあてられてしまう。
俺や啓太にはない、濃厚な大人の色香は、まだ俺には刺激が強すぎる。
和希さんが俺のほうに身を寄せる分だけ、体が引けてしまっている俺に気づいて、和希さんは少し困った風に笑う。
「そんな警戒しなくても」
「えっ、あの・・・す、すみません・・・」
たしかに、俺のこの態度は和希さんに失礼にあたるかもしれない。
俺はソファに座りなおして、もじ、と体をちぢこめてしまう。
「そんなに俺のこと、怖い?」
「えっ?!いえ、そんなことはっ」
ただこういうシチュエーションに慣れてないだけで、和希さんのことが怖いだなんてそんなことはない。
むしろ・・・いつもかっこいい人だなって思ってる。
すごく若々しくて、でも落ち着いていて、物腰は優雅で上品で。
このクラブにはそういった上流と呼ばれるような男達が他にも大勢いるけど、
そんな中でも和希さんは一際目を引くというか・・・素敵な人だと思う。
でもだから俺は・・・少し気が引けてしまっているのかも。
あまりに魅力的な人だから・・・こうしてそばにいるのに慣れなくて・・・怖い、といえばそうなのかもしれない。
「うーん・・・でもまぁ、もしかしたら俺の気持ちがバレばれで、の本能が危険を告げているのかもしれないけど」
「え?」
「俺、啓太にも嫌われててさぁ。やっぱりみたいな感じで、俺、避けられちゃうんだよね」
「えっ、で、でも啓太は和希さんのこと嫌ってなんか・・・って、俺だって別に和希さんのこと避けるつもりはっ」
あわてて否定すると、和希さんはクス、と笑った。
やっぱり少し、困ったような表情で。
「そういうとこも、啓太に似てるんだな。さすが友達同士」
「啓太に似てる、って・・・まさか和希さん、啓太にもこういうこと・・・」
「ん?」
「いや、えっと・・・その・・・」
とっさに、今俺にしてるようなことを啓太にもしてるのかって・・・啓太にせまったりしてるのかってきこうとしてしまった。
そして啓太は和希さんに口説かれ落とされて、そしてこの店で働き始めたとか・・・え、でもまさか、そんな。
いや、たとえそうだとしても、そんなこと確認してどうするんだ。
俺には関係ないことだ。・・・だけど。
どうしてだろう、なんだか胸が・・・苦しい・・・?
「あれ?・・・もしかして・・・嫉妬してるの?」
「へ?」
「その反応・・・図星、って感じだな。へぇ・・・やっぱりって啓太のこと・・・」
「えっ、ちょっと、なに言ってるんですか・・・っ」
和希さんの勝手なかんぐりに、反論する声がまたひっくりかえってしまった。
「俺はべつに、啓太と俺とはそんな関係じゃありません!」
「ふぅん?でも、俺と啓太の関係に興味をもっただろ。・・・ということは、もしかしてのお目当ては俺だったりする?」
「は、はぁっ?!ちょっと和希さん、自意識過剰ですよ!」
「そう?じゃあ・・・俺と啓太、どっちがいい男?」
「はいぃ?!」
和希さんは足を組んでひざの上に両ひじついて、両手で頬を支えてこちらをみてる。
にこにこ笑顔で・・・って、この表情、完全におもしろがってるっ!
「ど、どっちがいい男かなんて、俺も・・・男ですからっ。いい男かどうかなんて俺にはわかりません!」
「ふぅん・・・じゃあ、ためしてみる?」
和希さんはほおづえをとくと、その手をすいっと俺の方に伸ばした。
長い指が俺の頬をかすめ、耳の上の髪にうずめられる。
「っ・・・!」
おもいがけない行動にびくりと体が震えた。
とっさに閉じた目を再び開けると、目の前に和希さんの瞳があった。
「髪・・・柔らかいんだな・・・」
指で髪をつままれ、軽く揉まれると、耳にもかすかに触れて、背中がゾクリとしてしまう。
「・・・耳、熱くなってる。もしかして頬が赤いのは照明のせいじゃないのかな」
「や・・・っ」
からかわれた・・・それがまた恥ずかしくて、指摘された頬がかぁっと熱くなる。
耳をくすぐっていた指が顔の輪郭をたどってあごにそえられる。
く、と少し上向きにされて・・・

「このままキス、してみようか?」

「え・・・」

自然と出た声がやけに乾いていた。
和希さんの瞳がふせられ、顔が軽くかたむけられる。
薄くあいた唇から漏れる吐息が、俺の唇をかすめて・・・

「っわぁっ?!」

気づいたときには俺は和希さんをおもいきりつきとばしていた。
和希さんはそんなこと予測済みだったらしく、軽く襟を整えると、はぁーっと大仰にため息をついた。
「キスもさせてくれないんだな。こういうとこも啓太にそっくり」
「な・・・な・・・!」
、啓太とキスしたことある?あったらそれこそ俺、嫉妬しちゃうな〜、二人に」
「和希さんーっ!」
すっかりテンパってしまった俺に、和希さんはまぁまぁとドリンクをすすめてくれた。
氷も溶けてしまってずいぶんと薄まってしまったジン・トニックだったけど、
血がのぼって熱くなってしまった頭を冷やすのには十分だった。
「なぁ、やっぱりうちで働かないか?啓太がいるときはホスト修行のため啓太をつけざるをえないけど、
二人でかわいくじゃれつかれるのを眺めてるのはこちらの精神衛生上よくないんだよなぁ」
「そっ、そんなこと知りませんよっ。だいたい俺に啓太を指名させてるのは和希さんじゃないですかっ」
「じゃあ次回から俺を指名してくれる?」
「っ、そんなこと、できるわけないじゃないですかーっ」
オーナーである和希さんを指名なんかできるわけないのはわかっているし、それ以上に、
和希さんにこんな調子で口説かれまくってたら、なんかもう・・・絶対やばいことになる気がする!
グラスを両手でもってうらめしげに和希さんをにらむと、彼はクスッと笑った。
「まーた。そんなかわいい顔されると、なんとしても落としたくなるだろ」
「っ、し、知りませんっ!」

啓太がいたから、俺の身の安全は保障されていたのだということを、今あらためて知った俺は、
この店に来るときは必ず啓太の出欠を確認してからにしようと心に決めた。
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