Peanuts Kingdom 学園ヘヴン クラブ ドリーム ヘヴン

クラブ ドリーム ヘヴン Boy's Side

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遠藤和希
01.招待客
02.ハント
01.王様、という人

"おもしろいヤツがたくさんいるんだぜ"
と言う先輩に連れられて、はじめてその店のドアをくぐった。
まさかこういうところだとは思わなくて、最初はびっくりしてしまった。
だって、男相手のホストクラブだなんて・・・
男に接待してもらってなにが楽しいんだ、って、
こんなところに連れてきた先輩をうらめしくも思った。
でも・・・たしかにその先輩の言うとおり、いるホストはみな個性的で、
男の俺の目からみても、魅力的な男ばかり。
恋愛的な会話を期待してやってくる客もいるらしいが、
ただ、酒飲んで、話をして、楽しく盛り上がることだけを目的にしてる客もいるらしい。
俺も、そんな中の一人だ。

「いらっしゃいませ!」
ドアボーイの啓太がいつものように満面の笑顔で俺をむかえてくれる。
久しぶりの到来となってしまった俺に気づいて、啓太はわぁ、と感嘆の声をあげてくれる。
「また来てくださったんですね!もう飽きられちゃったのかなって寂しく思ってたんですよ」
「そんな・・・ただ最近ちょっと忙しくて」
「そうだったんですね。よかった。あなたの顔をみて、俺、ほっとしました」
その言葉に偽りはないかのような啓太の素直な笑顔に、つい、俺も赤面してしまう。
なんだってこう・・・かわいいかなぁ。
「ええと・・・今夜のご指名はどうしますか?」
「えっと、王様はいるかな?」
「王様ですね!はい、お待ちしていますよ!こちらへどうぞ!」

啓太に導かれるままに広いフロアへと足を踏み入れる。
ホストクラブというと、ギラギラしたイメージがあるが、ここは高級クラブといった落ち着いたたたずまいだ。
「おぅ!ひさしぶりだな」
不意に背後から声をかけられ、思わずビクリと体をすくめると、それをなだめるかのように肩に手を置かれた。
ふりかえると、そこには王様の笑顔が。
「うわっ!?」
「なんだ?驚いたのか?はは、悪い、悪い」
王様はぽんぽんと俺の背中をたたくと、俺に先立って席についた。
「まぁ、座れよ。最近こないから、どうしたかと思ってたぜ」
「さっき、啓太にも同じこと言われたよ。俺、そんなに頻繁にここに来てたかなぁ?」
「さあな。しょっちゅう来てるやつは他にもいるさ。でもはな・・・」
王様は言葉を切ると、じっと俺をみつめてきた。
「・・・なに?」
なんだか落ち着かない気分になって、ついそうたずねると、王様はニッと笑った。
「ちょっと他とは違うかな。が来ないと、その・・・寂しいって思わせるんだ」
「えっ・・・」
まさかこんなこと言われるなんて。
相手はホストだとわかっていても、なんだか口説かれてるみたいで・・・
あ、ホストだから客を口説くのか。
俺はふぅ、と一息おいてから王様に言った。
「俺なんかを口説いてもしようがないでしょう」
「え?口説いてたか?」
「口説いてましたよ。自覚なかったんですか?」
「口説いたつもりなんてねーよ。本当のことを言っただけだ。なんだ、口説かれたと思ったのか?」
「うっ・・・」
自ら墓穴を掘っちゃったかも・・・かぁっと熱くなった顔を隠すように手で口元をおさえる。
王様も、にやにやしながら俺をみてる。あぁ、もう!
がいいならいくらでも口説いてやるけどな。どうする?」
肩を抱かれたりなんかして、体の密着度が増す。
王様の体温が伝わってきて、これじゃ俺がドキドキしてしまってるのも王様に伝わってしまうんじゃなかろうか。
「ちょ、ちょっと、王様!」
「ん?やっぱこういうのはダメか?ま、いいけどな」
王様はそう言って俺から離れてくれた。・・・はぁ。
「ははは、そんな緊張するなって。がいやがることはしねーよ。さ、なにか飲むか?なんでも作ってやるぜ」
王様はそう言いながら手馴れた様子でテーブルの上を整えていく。
・・・これが本当の彼、なのかな・・・俺みたいにただ一緒に酒飲んで、話をするだけの客だけじゃなくて、もっとちゃんと、ホストらしいこともしてる。
「・・・ん?なんだ。俺をみつめたりなんかして。ようやっと、俺の魅力に気づいたか?」
自信満々の彼の様子に、つい苦笑をもらしてしまう。
「なに笑ってるんだよ?」
王様は軽く唇をとがらせてすねてみせる。
・・・まったくもう。さすがNo.1ホストだね。たしかに貴方は・・・魅力的だ。
「・・・いいよ」
「うん?」
「王様にだったら・・・口説かれてみてもいい、って言ったんですよ」
「・・・そりゃ・・・フ、そうか」
王様はゆったりと笑みを浮かべた。
その表情はいままでみたことがない、どこか艶っぽいと思わせるような表情で。
早速俺はドキドキしてしまう。
とはいえ、このまま向こうの土俵に持ち込まれる気はない。
「とりあえず、ビールもらえるかな。のど渇いちゃったよ」
「俺もご相伴にあずかれるんだろう?今夜はとことんつきあってやるよ」
王様にとことんつきあわれたりなんかしたら俺が酔いつぶれちゃうよ。
と、いうか。なんだか身の危険すら感じるな。
綱の上を渡るようなスリル。堕ちるか、踏みとどまるか。
まったくもって俺の方が不利な気がするけど、しかたがない。
だって相手は王様なんだし。
王様だから、しかたがないって・・・もうあきらめる気になってる俺は、もうとうに堕ちているのかもしれない、な。
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