Peanuts Kingdom 学園ヘヴン クラブ ドリーム ヘヴン

クラブ ドリーム ヘヴン Boy's Side

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遠藤和希
01.招待客
02.ハント
02. 特別な人

カウンターのわきに、そっとたたずむ影。
華やかな明かりを避けるようにして、その人はそこにいた。
それでも、光の加減で浮かび上がるスーツのラインはすらりと上品で。
ふと交わった視線のその先にある瞳に、俺は一瞬で心惹かれていた。

「篠宮紘司だ。よろしく」

ホストでありながら、普段店内に顔をだすことはまれだという。
いつもは厨房にいて、料理の腕をふるっているというのだからおもしろいものだ。
「でも、ホスト、なんですよね?」
そうたずねると、彼は少し困った風な顔をした。
「ああ。そういうことになっている。ここのオーナーが "ホストとしてでなければ雇わない" というんだ。
俺はこういうことには向いてないと思うのだが・・・」
それでも。
濃紺に艶めくスーツをすっきり着こなし、漆黒の髪に白い肌がさえて、
間近でみてあらためて素敵な人だと、そう思う。
こんな人が厨房に入りっぱなしというのは、たしかにもったいないかも。
「篠宮さんと話をしてみたいって興味をもつ人はたくさんいると思いますよ。俺もそうだし」
「そうか?まぁ・・・そう言われるのは、悪い気はしないが」
そう言って、篠宮さんはにこ、と微笑む。
ひどく優しい微笑に、おもわず頬が熱くなる。
「でもよく俺をみつけたな。久しぶりにフロアに出たから、あまり目立たないようにしてたつもりなんだが」
「目立ってましたよ。少なくとも、俺の瞳には」
・・・」
篠宮さんは俺の言葉に驚いたように目を見開いた。
「俺を口説く気か?」
クス、と笑われ、今度は耳まで熱くなった。
口説こうだとか、そんなつもりはなく、ただ、正直な感想を述べただけのつもりなんだけど。
言われてみればそのとおり、俺、篠宮さんのこと口説いてたかも。
「結構、手馴れてるんだな。俺よりホストに向いてるんじゃないか?」
「そんな・・・」
篠宮さんの言葉に思わず悲しげな表情をしてしまう。
そんな俺をみて、篠宮さんはクス、と笑った。
「冗談だ。・・・とはいえ。他のやつらにもこんな風にしてたのか?とすると、妬けるな」
「ちが・・・っ」
妬ける、だなんて・・・そんなこと。
そんなこと、絶対無い。

だって俺、なんでいままで篠宮さんのことみつけられなかったんだろうって、
不思議でたまらないんだ。
このお店には何度も来てるのに。
もし、篠宮さんの姿を一目でもみてたら、きっと俺、すぐあの人は誰?ってきいてたと思う。
俺は・・・俺が篠宮さんに抱いているこの気持ちを、疑ってほしくはない。

「俺っ、誰にでもこうだなんてこと、ないです。篠宮さんは違う・・・」
・・・」
「口説くとか、そういうんじゃなくて、ただ俺は、俺が篠宮さんをどう思っているか、伝えたくて」
本当に嬉しかったんだ。
こうして、篠宮さんと出会って、言葉を交わすことができて。
俺は、好きだなと思ったら、その気持ちを相手に伝えたいって、そう思うから。
告白とか大げさなものじゃなくて、ただこの好意を、受け止めて欲しいだけ。
誰にでもいい顔をする、軽いやつなんて思われたくない。
俺は篠宮さんだから、伝えたいんだ。
あなたのこと、俺は好きです・・・っていう、この気持ちを。

「・・・・・・そうか」
そっ、と、大きな手のひらが俺の頬に触れた。
「わかった。わかったから・・・そんな泣きそうな顔をするな」
親指が、目のすぐ下をそっとなぞっていく。
泣いてたわけじゃないけれど、目に見えぬ涙を拭いてくれるかのように。
その優しいぬくもりに、今度こそ泣きそうな気持ちにな?った。
を疑っているわけじゃない。だが俺は・・・ホストとしての自分に自信がないから・・・
これでもに気に入ってもらいたい、楽しい時間を過ごしてもらいたいと必死なんだ」
「篠宮さん・・・」
頬を包んでいた手が離れ、俺の頭の上にぽん、とおかれる。
ニ、三度なでられただけで、その懐かしい感触に胸がじんとする。
「俺をみつけてくれてありがとう。みつけてくれたのがでよかったと思う」
「っ・・・でも、篠宮さんはホストの仕事より、料理を作っている方が好きなんでしょう?」
「だが、の相手ならば、料理をしている時より楽しめそうだ。
・・・こうして、赤い顔をしているを眺めているのはな」
「しっ、篠宮さん?!」
本当に、蒸発してしまいそうなほど真っ赤になってしまっているであろう俺を、
篠宮さんはまた、冗談だ、と言って笑う。
俺と一緒にいて楽しいと、本当にそう思ってくれるなら。
俺は真っ赤になったみっともない顔をいくらさらしてもかまわない。

熱くなった頬を手でぱたぱたあおいでさまそうとしている俺に、篠宮さんは、
「少し、冷たいものでも飲んで、さますか?」
と言って微笑む。
「こういうもてなしは俺の得意分野だ。のイメージに合ったカクテルを即席でつくることもできるぞ」
「わぁ、じゃあ、それをお願いします!」
篠宮さんが慣れた手つきでカクテルをつくっていく。
いったいどんなイメージを篠宮さんは俺にもってくれたんだろう。
楽しみでどきどきしつつ、俺は篠宮さんの横顔をじっとみつめていた。
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