Peanuts Kingdom 学園ヘヴン クラブ ドリーム ヘヴン

クラブ ドリーム ヘヴン Girl's Side

タイトルをクリックすると、名前入力画面が出ます。
必ずJavascriptを有効にしてからご覧ください。
03. Secret Tip

「いらっしゃいませ」
不意に現れた一人の青年。
この人もホスト・・・?と思ったら、隣に座っていた西園寺さんが、やれやれとため息をついた。
「オーナー、なにかご用ですか?」
「・・・オーナー?!」
思わず大きくなってしまった声に自分ではっとしてあわてて口をおさえる。
彼はそんな私にニコリと微笑みかける。
「えぇ。オーナーの和希です。ちょっとお邪魔してもよろしいですか?」

クラブ「ドリームヘヴン」に来るのは三度目。
まだ、誰をご指名、というのはなくて、その都度あいてる人についてもらっている。
はじめて来店したときは、面とおしというのだろうか。
とりあえず、その時いた人たちとはお話させてもらって。
二度目は七条さんが。
そして今夜は西園寺さんがついてくれた。
二人ともまさに紳士といった感じで、落ち着いた雰囲気でゆったりできる。
お店の雰囲気もシックで重厚、という感じ。
女の子一人でも来やすい、そんなところがお気に入り。
でもいままでオーナーには会ったことがなかった。
まさかこんなに若い人だなんて。
驚いてしまった理由を素直に言うと、和希さんは嬉しそうに笑った。
「若作りしてるかいがあったかな。いつまでも若々しく!ね」
すると、西園寺さんははぁ、とため息をついて。
「この容姿には騙されないようにした方がいいぞ。腹の底にはなにを隠しているかわからないからな」
「えぇ?そうなんですか?」
「いやだな、西園寺さん。俺はいたってシンプルな男ですよ」
和希さんの言葉を受けて、西園寺さんはふんっと鼻をならしたりなんかしている。
「だいたい。なんでここに来るんですか?私と彼女との間を邪魔して」
「西園寺さんともあろう人が、俺一人いたからってどうってことはないでしょう?
俺がここに来たのは、お初にお目にかかる彼女に、ご挨拶をしたかったからですよ。・・・というわけで」
和希さんは私に向き直ると、あらためて、と軽く会釈をした。
「ここのオーナーの和希です。この店に来たのは初めて?」
「いえ、今夜が三度目です」
「そうでしたか。三度目の正直・・・お会いできて、光栄ですよ」
「は、はい・・・」
なんだろう。
なんか・・・七条さんも西園寺さんもすごく礼儀正しくて、
本当にレディとして扱ってもらっちゃってる感じだったのに、
和希さんはその上をいくというか・・・さすがオーナーというか。
物腰も優雅で、でもきちんとしてて。
爽やかな笑顔もまるでお育ちのいいお坊ちゃんといった感じ。
「・・・少し、緊張してる?」
「あっ、えと・・・すみません」
「はは、謝らないで。急におしかけたのはこちらなんだから」
「オーナー」
ぽん、と西園寺さんの手が私の肩におかれ、すっかり和希さんの方へ意識がいっちゃってたことに気づかされる。
西園寺さんはそのこともお見通しだったらしく、憮然とした表情で和希さんをにらんでいた。
「オーナーが来たから、緊張してしまっているんですよ」
「・・・ふ、ん?でも緊張するってことは、それだけ俺のこと、意識してくれてるってことですよね?」
「え、えぇ?」
い、意識してるかって・・・そんなこときかれても、私、なんてこたえたらいいのかわからないっ
この人って、オーナーなのに、ホストのお仕事もしちゃうのかしら。
「ちょっと、オーナー?!」
「リラックスしてゆったり過ごしてもらうのも大切だけど、夢のような時間を過ごしてもらうのも大切なお務めですよ、西園寺さん」
「っ・・・そんなことはわかっています」
「男女の仲には適度な緊張感も必要・・・でしょう?」
また、和希さんは私の方をみて同意を求めてくる。
男女の仲って・・・意味深すぎて、そんなの簡単にそうですね、なんて言えないよ・・・

「西園寺さん、ちょっと・・・」

和希さんと西園寺さんの間にはさまれちゃって、
どうしたらいいのか困っていたところに、救いの手がさしのべられた。
西園寺さんに別の人からの指名が入ったのだ。
彼にとってはフリーでついてる私より、指名してきたお客様の方が大事。
、すまない。またあとで戻ってくるから・・・」
ちら、と西園寺さんの視線が和希さんへと向けられる。
「・・・ではオーナー、しばらくの間、彼女をおまかせしてもよろしいですか?」
軽くムッとしつつも、しかたないといった調子でそう言うと、
和希さんはOK、OK、といたって軽く、手まで振って西園寺さんを見送った。

「さて・・・と?あぁ、氷がとけてしまいましたね。なにか作りましょうか?」
「え、っと・・・あの、和希さん?」
「ウン?」
「和希さんは・・・オーナーなんですよね?オーナーなのに、私なんかについてていいんですか?」
「たしかに俺はオーナーだけど、だからといってのそばにいてはいけないという決まりはないですよ。
俺にだって、ひとときの夢を楽しむ権利はあるしね」
「はぁ・・・」
私と一緒に過ごす時間をひとときの夢、だなんていうなんて。
これって立派な口説き文句よね・・・
和希さんに作ってもらったカンパリソーダを飲みつつ、ドキドキしてしる心臓をおちつかせようとしてみる。
オーナーとはいえ、ここのホストたちと引けをとらない華が、この人にはある。
端整な横顔に長い睫が影を落とす。
ウィスキーの水割りが通るのどぼとけが、コクリと動く。
うらやましいほどさらさらの髪も、彼の魅力の一つか。
思わずみとれていると、ぱち、と和希さんと目があった。
「どうしたの?」
「えっ、いや、あの・・・でも、和希さんのこと、指名とかはできないんですよね?」
「あー・・・うん、そうだね。でもをみかけたらまた来るよ」
「えっ。私が他の人を指名してても?」
そう言うと、和希さんは・・・不思議な、なにか意味ありげな微笑を浮かべた。
「ここはね。必ず指名しなくちゃいけない、なんて決まりもない。が過ごしたいように過ごせばいい・・・
はまだ誰、という風に決めてはいない。ずっとそのままでいてくれても構わないんだ」
「えぇと、つまり、ただお店に遊びにくる、というのでもいいってこと?」
「もちろん、をひとりになんかさせないけど。ひとりになりたいなら、わざわざここには来ないだろ?
ここに来るということは、誰かと時間を共有したいと思っているから。
そして俺としては・・・には固定の誰かを決めてほしくはない」
「・・・なぜ?」
和希さんの言葉に、落ち着きかけた鼓動が再び速さを増していく。
オーナーだったら、指名を続ける固定客を確保したいと考えるのが普通なのに。
どうしてこの人はそんなことを言うのか・・・
その答えを、私は期待してしまっている。
和希さんはそんな私の気持ちをお見通しなのか、フ、と微笑んで、耳元に顔を寄せてきた。

がフリーなら、こうして俺がのそばに来れるだろ・・・?」
「っ・・・」

かすれた声が囁きに甘さを加えて。
反射的に身を引いた私から、和希さんもゆったり離れてまた微笑む。
ぴりぴりと全身がしびれるよう・・・思わず出た吐息の熱さに自分でもぎょっとする。
「か、和希さ・・・」
「ふふ、ドキドキしてくれた?なら、本望なんだけどね。うちのホストはやり手が多いから、俺の入るスキがなくて・・・」
この人に、こんな風にせまられて、他のホストに転ぶ人なんているのだろうか。
なんか私、とんでもない罠に堕ちてしまったような、そんな気がしてならない。
「それか・・・あの七条さんや、西園寺さんでも決め手をかけたに、認めてもらいたくて必死なのかもな・・・
どう?また、俺に会いにきてくれない?」
今度は少し小首をかしげて、甘えるように私をみつめる。
色気を含んだ視線に、頬が焼けるように熱くなる。
返事を待つ和希さんの視線から逃れたくて、また来ます、とだけ言うと、
和希さんは最初にみせた、爽やかな笑みを浮かべ、
「指名はなし、で・・・それが俺に会うためのTipだからね」
と言って、ウィンクした。
もしお気に召しましたら拍手をポチしてくださると嬉しいですv

上に戻る