Peanuts Kingdom 学園ヘヴン クラブ ドリーム ヘヴン

クラブ ドリーム ヘヴン Girl's Side

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First Sight

クールな街の風景に、そこだけぽっかり暖かくみえる。
古めかしいドアにかけられた、オレンジ色のランプ。
ついに来てしまった・・・
前に初めて来たときは、いろんなことが重なって落ち込んでいた私を
元気づけようとしてくれた会社の先輩につれられて。
ホストクラブなんて、あまりいいイメージをもってなくて、
店に入ってからも、先輩のかげに隠れるようにしてびくびくしてしまったのだけど。
迎えてくれたホストの人たちは本当に優しくて、そして、素敵な人たちで。
気づけばずっと笑いっぱなしだったことに、自分で驚いてしまった。
「また来いよ」
と大きな手の平を私の頭に置いて、その店のNo.1ホストの"王様" は軽くウィンクしてくれた。
そんなこと、男の人にされたことなんてない私には刺激が強すぎて、
恥ずかしさに頬が熱くなるのをどうすることもできなかった。
でも、店を出る頃には本当にまた来たいと、そんな風に思えるようになってしまっていて。
そしてまさかこうして本当に来てしまうとは。
しかも一人で。
我ながらずいぶんな勇気をふりしぼったものだと思う。
でも、つれてきてくれた先輩は仕事が忙しくて、なかなか都合をあわせることができなくて、
その先輩も、気が向いたときに一人でふらっと来ることがあるって言ってたから、
きっと、私が一人で行っても大丈夫だと・・・そう思って来てしまったけど。

思い切ってドアノブに手をかける。
震えそうになるのをこらえて、いきおいよくドアを開けると、
「いらっしゃいませ!」
と明るい声が迎えてくれた。
そこにいたのは、こないだ来たときと同じドアボーイの男の子。
私をみると一瞬きょとんとした顔になったけど、すぐにやわらかな微笑みがひろがった。
「また、いらしてくださったんですね。嬉しいです」
「え・・・私のこと、覚えているんですか?」
「もちろん。ここにいらっしゃるお客様のお顔は一度で覚えるようにと、
オーナーから言われてるんです」
ふわぁ・・・さすがだ。
「今日はお一人なんですか?」
「あっ、はい・・・」
「ん?・・・もしかして、少し、緊張してます?」
「うっ・・・あ、はぁ・・・」
のぞきこまれるように顔を近づけられる。
そんな風に親密にされたら、あまりこういうことに慣れてない私はどうしたらいいかわからなくなる。
とまどって言葉を失う私に、彼はくすっと笑った。
「大丈夫。もっとリラックスして?みんな、あなたとお話したいと思ってるんですから」
「えぇっ?そんなことはないでしょう」
「お世辞だと思いますか?ではまずはお店の中に入ってみてください」
彼に手をとられ、店の奥へと案内される。
こんな、お姫様みたいにエスコートされるなんて・・・つい、歩き方もぎこちなくなる。
うう・・・我ながら不慣れな自分が悲しい・・・

「さぁ、顔をあげて」
「えっ・・・」
彼にうながされるまま目線をあげると、一瞬視界が白く輝いた。
「いらっしゃいませ!」
「わっ・・・」
店内のあちらこちらから私を迎える声が響いた。
でも誰が誰なのかちっともわからない。
店内が暗いせいもあるが、一度会ったくらいでは顔と名前なんて一致しない。
「ど、どうしよう・・・」
思わずもらしたつぶやきに、啓太くんが首をかしげる。
「なにがですか?」
「えっと・・・ごめんなさい。私、もうどうしたらいいのかわからなくて・・・」
そういうと、啓太くんは私の手をきゅっと握り締めた。
はっとして顔をあげると、啓太くんはやわらく微笑みかけてくれた。
「大丈夫。すべて、俺達にまかせてください。それが、俺達の役目なんですから」
「はぁ・・・」
啓太くんてやさしいなぁ・・・
そう、前に来たときも、こんな風に紳士的に私のことを扱ってくれて。
男の人ってお酒が入ると下品になったりする人もいるけど、彼らはそんなことはなくて。
一緒にいて楽しくて、安心できる・・・だからまた来たいと、彼らに会いたいと思ってしまったのだ。
啓太くんにエスコートされて席につくと、
かたわらにひざまづいた彼がおしぼりを差し出してくれていた。
「どうぞ」
「あっ、ありがとうございます・・・」
熱めのおしぼりで手をふいて、ようやっと落ち着きを取り戻せてきた。
周りをみると、たしかに見た顔がちらおら見受けられた。
あそこにいるのは・・・王様だ。
今夜は誰か別のお客さんの相手をしてるようだ。
No.1ホストだもんね。すごいなぁ・・・

「啓太、初めてのお客様か?」
不意に、凛とした声が響いた。
顔をあげると、その声の主と目があった。
「あっ、西園寺さん」
ふ、と唇が微笑を浮かべる。
その人はまるで陶器でできた西洋人形のように整った美貌の人だった。
本当に男の人?
女性といわれても疑わないかもしれないほど、本当に、美しいとしか形容のしようがない人が、
そこに立っていた。
「お店に来てくださったのはこれが二回目です。前はお友達とご一緒したけど、今夜はお一人で」
「ほぅ。では私とはまだ面識がないわけだな。・・・隣、座ってもいいだろうか」
「えっ、あ・・・っ、はい、どうぞっ」
求められるままに隣のスペースを少し空かせる。
すると彼はふわりと、まるで空気でできてるのかと思わせるような軽さでそこに座った。
そして軽く横の髪をはらうと、
「はじめまして。西園寺郁です」
と、微笑んだ。
「あっ、はじめまして、あの、私は・・・」
「知っている。さっき、啓太の説明でだということはわかった」
「えっ、どうして・・・」
「興味があった。先日、が来たとき、私は不在だったが、臣が詳しく教えてくれた。
はじめはとまどっていたようだったが、楽しんでくれていたようだ、また、きっと来るだろうと」
「えぇっ」
西園寺さんは小さくため息をついた。
「臣のやつ、いつもそうなんだ。わざと私の興味をそそるような話し方をする。
もちろん、実際に見てみて、たしかに興味をそそられたのだが」
そう言って西園寺さんはまたやさしく微笑む。
その視線の先には確かに私がいて、言葉すべてが私に対して向けられていることは間違えようもないのだけれど。
こんな綺麗な人が私に興味をもつだなんて・・・そんなに私、ものめずらしいのかしら。
「怪訝そうな顔をしているな。私の言うことが信用できないか?」
「えっ、いえ、そんなことは・・・」
「まぁそうかしこまらなくてもいい。おまえはあまりすれてなさそうだな。そういうところ、私は好きだ」
「っ?!」
西園寺さんの言葉に驚く私をよそに、西園寺さんはテーブルの上に置かれたメニューを手にとって広げている。
「なにか飲むか。どういったのが好きだ?」
「えっ、あっ、えーと・・・あ、甘めのカクテルかなんかを・・・」
さっきの言葉といい、今のといい、なんか西園寺さんの「好き」って声にいちいち反応してしまう。
「そうか。私は甘いものは苦手なんだが、これなんかはおすすめだ。飲んでみるか?」
言われるままにコクコクうなずく。
この人がオススメだというのなら間違いはない・・・
さっきの啓太くんの「すべてをまかせてください」というセリフが頭をよぎる。
この人になら・・・西園寺さんになら、安心してまかせていられる。
会ったばかりなのにそんな風に思えるのって、もしかしてこの人はすごい人なんじゃなかろうか。
だって、あらためてみると、本当に綺麗な人なんだもの。
肩にかかる巻き毛はまるで西洋の貴族みたい。
優雅な物腰が余計にそうみせるのだろう。
ふとふせられた睫なんか壮絶に長くて、ついみとれてしまう。
「・・・どうした?じっと見つめて」
「えっ、あっ・・・その、ごめんなさい・・・っ」
不躾にじろじろみてしまうなんて、我ながら恥ずかしい・・・っ
「・・・私に興味をもったか?」
「えっ・・・」
予想以上の近さで西園寺さんの声がして、驚いて視線をあげるとすぐ近くに西園寺さんの顔があった。
きら、と光る瞳は妖しく私をとらえ、彼の体からたちのぼる香水にふとめまいをおぼえる。
は可愛いな。素直でウブで・・・新鮮な反応をする」
耳の近くに唇が寄せられ、かすれたような声でささやかれる。
それだけでもう、なんだか気が遠くなる・・・
つぅ、と指で頬に触れられた。
ふ、とかすかな吐息が耳にかかって・・・
「・・・おい、大丈夫か?・・・からかいすぎたか」
言葉も出せないほど、体の動きがフリーズしてしまった私に気づいて、西園寺さんは苦笑した。
「悪かった。つい、イタズラが過ぎた。ほら、しっかりしろ。水でも飲め」
「っ、あ、あぁ・・・」
ぼんやりしたまま、差し出されたコップを口につけ、コクンと水を飲む。
冷たい水がのどを通り過ぎていって、ようやっと体の緊張が解けた気がした。
それでも、たった今西園寺さんが触れた箇所が、ちりちりと焼けたように感じる。
私、すごく意識しちゃってる・・・
「はぁ・・・」
思わず出てしまったため息に、西園寺さんがクス、と笑った。
「まったく・・・よく一人で来たな。それだけこの店が気に入ってくれたということなら、嬉しいが」
ちら、と西園寺さんを見上げると、さっきの妖艶な雰囲気はひそめ、やさしい微笑を浮かべていた。
私はもう一度ため息をついてしまう。
ようやっと、自分がひどくドキドキしてしまっていることに気づく。
心臓の音が耳にまで伝わってきてうるさいくらいに。
きっと顔も真っ赤だろう。熱い・・・
「悪かったな。臣がいけないんだ。あんまり私を煽るから。
私がみたいな素直なタイプが好みだということを知っているからタチが悪い」
また・・・口説かれてるん、だよね?私。
もうそんなこともわからなくなりそうなほど、動揺してしまっている。
「で、も私・・・べつに西園寺さんみたいに綺麗じゃないし・・・」
あなたみたいに綺麗な人に興味をもたれるようなものじゃないということを言いたかったのだけど、
言葉足らずだったかも。
西園寺さんは一瞬きょとんとした。
「えっ、あ、あのっ・・・」
なにか説明を付け足そうと、口を開いたけどなにも出てこない。
あわあわとあわてる私に、西園寺さんはまたゆっくりと微笑を頬に浮かべた。
は綺麗だよ。とても」
「っ・・・」
西園寺さんの指が、そうっと私の髪をすくった。
「髪も、瞳も、肌も、なにより心が素直で綺麗だ。臣の見立ては的確だ。私はおまえに興味をもった」
「さ、西園寺さん・・・」

「おまたせしました」

カクテルが運ばれてきた。
西園寺さんはグラスを二つとると、片方を私に差し出した。
「まずは乾杯だ。との出会いに。そして、もっと教えて欲しい。のことを」
「西園寺さん・・・」
引き寄せられるようにグラスがあわさり、チン、と音が響く。
「乾杯」
軽くグラスを持ち上げ西園寺さんは私を見つめる。
もう、その視線をそらすことなどできない。
私ももっと知りたい・・・西園寺さんのことを。

彼がこのクラブでNo.2のホストだということを知ったのは、
すっかり西園寺さんの虜になってしまったあとだった。
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