Peanuts Kingdom 学園ヘヴン クラブ ドリーム ヘヴン

クラブ ドリーム ヘヴン Girl's Side

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01.自然な私のままで

「いらっしゃいませ!」
重厚な扉の向こうに広がるまぶしい世界。
その向こうから、こちらに向かってすばやくかけよってくる影が一人。
「おまちしてました!今夜の・・・ご指名は?」
そう話しかけてきたのは、ドアボーイの啓太。
まだ入ったばかりなので、こうしてドアボーイをつとめて、来る客に顔をおぼえてもらおうという店の方針らしい。
オーナーがここで働くホストたちをいかに大切にしてるかがそこからもうかがえる。
啓太は緑色のネクタイをしめ、まだ着慣れぬ風の赤いスーツを身にまとっている。
ぴん、ぴんとはねたクセッ毛がチャームポイントの、可愛い少年だ。
くりっとした大きな瞳でまっすぐみつめられると、なんだかいい子いい子したくなる。
庇護欲をそそられるというのだろうか。
末恐ろしいよと紹介したオーナーの気持ちがわかる気がする。
「前回来たときに私が指名したのが誰だったか・・・覚えてる?」
少し意地悪な質問をしてみると、啓太はとまどいつつも、ええと、ええとと記憶をたぐりよせている。
「ええと、たしか・・・王様、でしたよねっ」
「あたり。よく覚えていたわね」
「えへへ・・・」
褒められて嬉しいのか、頬を赤く染めてはにかむ。
本当にかわいいなぁ。ホストに昇格したら、まっさきに指名してあげたいわ。
「じゃあ今夜も王様を?」
「そうね、お願い」
「かしこまりましたっ。王様ーっ、ご指名入りましたーっ」

啓太にエスコートされながら、広い店内へと足を踏み入れる。
すると正面に、王様と呼ばれるこの店No.1ホスト、丹羽哲也が立っていた。
「ようこそ、待っていたぜ」
軽くウィンクなんてしてみせるも、その大きな体と男らしい顔立ちがそれをイヤミに思わせない。
彼と対峙していると、知らぬうちに微笑んでいる自分に気づく。
大きな手に手をあずけ、柔らかなソファへと腰をおろした。
「で、今日はどうしたんだ?」
王様はコップに氷をいれながら、なにげなくそうたずねてくる。
そう、私がなんの理由もなくここに来ることなどないと知っているかのように。
「別に・・・なにもないわ」
「そうか?なにもなくて、ただ、俺に会いに来たっていうなら、可愛げがあっていいけどな・・・どうする?」
どうする?というのは、酒をつぐか、水にするかの選択をしろということか。
「お水にしようかな」
「安いな」
平然とこんなことを客にむかって口走っても、なんの文句も言われないのが王様の人徳なのだろう。
私もつい笑ってしまう。
「歩いてきたからのどが渇いてるの。お水ちょうだい」
「へいへい」
王様はテーブルの端においてあったミネラルウォーターのペットボトルを手に取ると、
くいっと蓋をあけてコップにそそいでくれた。
カラン、と氷が音をたててまわる。
もう汗をかいているコップをタオルでふきながら、私にさしだしてくれた。
「どーぞ」
「ありがと」
ひんやりとした冷気が指先に伝わってくる。
「俺ももらってもいいか?」
「お水でも?」
「俺ものどが渇いてるんだ。さっきまで店の掃除してたからな」
「うそぉ。No.1ホストの王様が、掃除なんてするわけないじゃない」
「ところがウチじゃそうでもないんだ。ちょっとした失敗しただけで、なんだのかんだのと罰ゲームが待ってるのさ」
「へぇ・・・どんな失敗したの?」
「それは言えねぇな」
「なんで?」
に、かっこ悪いとこみせたくないからな」
王様はそういってニッと笑ってペットボトルに直接口をつけて飲みだした。
上下に動くのどぼとけと、軽く開いた唇の間をとおる水に、男の色香を感じてしまう。
さっきの言葉はうそじゃないということは、あっというまにペットボトルを飲み干されてしまったことから十分察することができた。
「もう飲んじゃったの?」
「ああ、もう空っぽだ」
「なにか他のものを頼もうか?」
「おごってくれるのか?」
「なんでもいいよ」
「そうだな・・・じゃあ・・・また水もらおうかな」
どんだけ水飲む気よとあきれもしたが、おどけたような王様の表情がなんだかかわいくみえる。
こそ、水だけでいいのか?なにか食べ物は」
「あまりおなかすいてないんだけど・・・おつまみもらおうかな」
「酒も入ってないのにか?」
「じゃあお酒もちょうだい」
「ははは、別にいいぜ、おつまみだけだって。・・・なんか今夜のは、酒をいれたくないみたいだしな」
不意に王様に顔をのぞきこまれ、その瞳の深さにどきりとしてしまう。
「・・・いいの?」
「ああ」
ゆったりとした笑みに、つい、ゆだねたくなる・・・心を。
「今夜は篠宮のやつが新しいレシピを開発したとかいってはりきってたぜ。それ、頼んでみるか?」
「そうね」
自然と顔が笑顔になる。
王様と一緒にいると、王様のそばでなら、私は自然な私でいられる。
「・・・いい笑顔だ」
大きな手が、軽く私の頭をなでた。
おもわず目をふせた私の唇に、王様の匂いのまざった風が触れていった。
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