Peanuts Kingdom 学園ヘヴン クラブ ドリーム ヘヴン

クラブ ドリーム ヘヴン Girl's Side

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03. 拗ねる人

「どういうことだか、きかせてもらおう」

彼は私の隣に座るなり、ムッとした表情で腕と足を組んだ。
西園寺さんのような整った相貌の人の怒った顔というのは、妙に迫力があって・・・正直言って怖い。
でも、彼がそうやって不機嫌になってしまうような理由をつくってしまったのは、ほかでもないこの私。
「え、えーっと・・・怒ってる?」
「怒ってなどいない」
口ではそういいつつも、こちらをみようともしないって・・・それって怒ってるってことじゃ?
「西園寺さあん・・・」
せめてこちらをむいて欲しくて腕に触れてみたけど、腕組みを解く気はないらしく、ちらっと鋭い視線をこちらによこすだけ。
「そのような・・・かわいらしい声を出してみせてももう遅い。私に無断で・・・携帯を変えるなど・・・」
「うっ・・・」
そう。
西園寺さんの不機嫌の理由はこれ。
私が西園寺さんに断ることもなく携帯を変えてしまったことにいたくご立腹なのだ。
変えた時に西園寺さんにすぐ連絡をすればよかったのだが、
またすぐお店に行くだろうし、その時に教えればいいと思っていたのだが、
そういう時に限って、西園寺さんからメールをもらっていたみたいなのだ。
「せっかくにみせたい景色を写真に撮ったものをメールしたのに、その返事もなしのつぶて」
「えっ、わたしにみせたい景色って?写真残ってる?」
「もう消した」
「ええーっ!」
消した、だなんて、絶対ウソ。
でもそうやってすねてみせてるんだ、この人は。
困ったなと思いつつも、でもかわいらしい、なんて思ってしまうあたり、私もそうとう・・・かな。
「そんなぁ、西園寺さん・・・ね、機嫌なおして?新しい携帯の連絡先、教えるから」
は私と連絡をとりたくないのだろう?ならばいらない」
「んも〜、西園寺さん〜〜〜」
これではどちらがホスト役なのかわからないなぁ。
どうしたら西園寺さんの機嫌が直るのかしら。

「郁、すねるのはそのへんにしておいたらいかがですか?彼女が困ってるじゃないですか」
「臣」
「七条さん・・・」

思いがけない助っ人の登場に、心底ほっとする。
でもすぐさまはっと気づいて表情をひきしめる。
私の様子を注意深く観察しているような、そんな西園寺さんの視線を感じたから。
「なにをしにきた、臣」
「いえ、遠目からみても、あまりに彼女が困っているようでしたから」
「フン。すこしくらい困らせてやらないと、私がどれだけ傷ついたか伝わらない」
「西園寺さん〜、本当にごめんなさいっ」
何度目かわからないごめんなさいで頭を下げると、七条さんがクス、と笑ったのがきこえた。
「好きな子ほどいじめてみたい・・・という気持ちはわからなくもないですけどね。
でも、あんまり度を過ぎると・・・嫌われてしまいますよ?」
"嫌われてしまいますよ?" のくだりが妙に迫力があって、思わず顔をあげてしまった。
すると、七条さんと目があって、七条さんはフフ、と楽しげに微笑んだ。
「臣・・・おまえまで私をいじめるのか」
西園寺さんは組んだ足の上にひじをおき、頭をかかえるようにしつつ七条さんを上目づかいでにらんでいた。
「まさか。でも、そろそろ仲直りをしてもいいころあいじゃないですか?ね?」
七条さんはそう言って私にむかってパチンとウィンクした。
「うっ・・・」
思わず頬が熱くなってしまう。
こんな私をみたら、また西園寺さん、不機嫌になっちゃうんじゃないかしら。
ちら、と西園寺さんの様子をうかがうと、今度は西園寺さんと目が合った。

すこし、乱れた巻き毛の向こうで、西園寺さんの瞳が濡れたように光っている。
壮絶なまでの美しさに、一瞬言葉を失う。

「西園寺さん・・・?」

「・・・・・・はぁ」

西園寺さんは組んでいた足を解くと、私のほうへとむきなおった。
まっすぐみつめる瞳は、さっきのようなすがるようなものではなかったけれど、
口元のあいまいな表情に、いつもよりも弱気な印象をうける。

「すまなかった」
「・・・・・・」
「少し、言い過ぎた・・・」
「西園寺さん・・・」

西園寺さんへの愛しさがこみあげてきて、おもわず顔もほころぶ。
「やれやれ・・・」
七条さんのため息に、西園寺さんがまたムッとした顔になる。
「なんだ、臣」
「いえ・・・彼女も大変だなと思いまして。
ね、もし、郁が手にあまるなと思ったら、僕にのりかえてもらってもいいんですよ?
僕ならここまで手はかかりませんから」
「え、ええっ?!」
不意に七条さんの顔が近づいてきて、そんなことを言われたものだから、つい赤面してしまったけど。
すぐさま西園寺さんの腕が私たちの間に割り込んできて、もう片方の腕でぐいっと西園寺さんの方へと引き寄せられた。
「臣、おまえの方がよっぽど手がかかって面倒だ」
「さっ、西園寺さん・・・っ」
西園寺さんの肩に頭をのせたままその顔を見上げると、西園寺さんはフ、と笑って私をみおろす。
も、今回のことに懲りてもっと私を大事にするんだな。
大事にされれば大事にしてやる・・・私はいたってシンプルな男だぞ?」
そう言って西園寺さんは私のこめかみにキスを落とす。
「・・・見せ付けてくれますね」
「当然だ」
「もっ・・・も、もう、西園寺さんてばっ!」
恥ずかしさのあまり、どうにかなってしまいそうだったけれど。

西園寺さんにだったらこんな風に執着されるのも悪くはないな・・・

と、思ってしまったのは、私だけの秘密にしておこう。
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